『光にふれる』
原題 | 逆行飛翔(英題:TOUCH OF THE LIGHT) |
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制作年・国 | 2012年 台湾・香港・中国 |
上映時間 | 1時間50分 |
監督 | チャン・ロンジー |
出演 | ホアン・ユィシアン、サンドリーナ・ピンナ、リー・リエ、ファンイー・シュウ |
公開日、上映劇場 | 2014年2月8日(土)~シネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、京都シネマ、シネ・リーブル神戸 ほか全国ロードショー |
~美しい映像と音楽、よくあるサクセス物語を超えた爽快感~
生まれてすぐ病気のために視覚を失った台湾の天才的なピアニスト、ホアン・ユィシアンについての映画…と聞いていたが、イメージしたものとは大きくかけ離れ、いい意味で予想を裏切ってくれた。それが、監督チャン・ロンジーの手腕であり、彼の才に目をつけて製作総指揮にあたった名匠ウォン・カーウァイのセンスの良さだと思う。しかも、驚いたのは、本人役で出演したホアン・ユィシアンのなんとも自然体の演技!彼の内面を映すかのような穏やかさがにじみ出ていて、ああ、この人にいっぺん会ってみたい、その音楽をじかに聴いてみたいと思うのだ。
物語の運びも、途中から意外な方向に向かう。田舎の町から大都会・台北の大学に進学し、寮生活をするユィシアンの日常、それを心配する母親の姿。そういう流れの中に、ひとりの女性に焦点を当てた別のドラマが侵入してくる。ダンサーになりたいという夢を抱きながら、母親に反対され、恋人ともうまくいってないシャオジエという名の女性。彼女は美しい容姿を持ちながらも、自分を取り巻く世界に苛立っている。そんな彼女がユィシアンと出会うことで、彼女の世界の色が変わってくる。ふたりのふれあいは友情以上で恋人未満、それがとても微笑ましい。シャオジエがどんな顔をしているのかわからないと言うユィシアンのために、彼の指で顔を触らせるシーン、光のない世界とはどんなものなのか、シャオジエが目をつぶってふたりで歩くシーン。そうした小さなふれあいが大きな力となって、ふたりの夢への階段を一段、一段と上げていく。また、寮でユィシアンと同室になるチンという名の男子学生の、純朴なキャラクターが私はとても好きだ。
以前、「視覚障害者だからコンクールで優遇されて1位になったのだ」という心ない人の言葉を受けたがゆえにそれがトラウマになり、コンクールを避けている主人公の傷みは切ない。だが、涙腺を刺激するだけの苦労話や平凡なサクセスストーリーに終わっていないところが何よりいいなと思う。魂と魂が共鳴したふたつの青春の光と影を鮮やかに描いて、爽やかな余韻を残す秀作だと思う。ユィシアンが奏でるピアノの繊細な音色、透明感に満ちた映像の美しさにも惹かれる。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://hikari-fureru.jp/
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