『ブランカニエベス』
原題 | BLANCANIVES |
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制作年・国 | 2012年 スペイン、フランス |
上映時間 | 1時間44分 |
監督 | 監督・脚本・原案:パブロ・ベルヘル |
出演 | マリベル・ベルドゥ(『パンズ・ラビリンス』)、ダニエル・ヒメネス・カチョ(『バッド・エデュケーション』)、アンヘラ・モリーナ(『題名のない子守歌』)、マカレナ・ガルシア、ソフィア・オリア |
公開日、上映劇場 | 2013年12月21日(土)~梅田ガーデンシネマ、京都シネマ、1月4日(土)~シネ・リーブル神戸 ほか全国順次公開 |
~グリム童話がスペイン風にアレンジされて、サイレント映画として甦った!~
2012年のアカデミー賞を賑わせた『アーティスト』(ミシェル・アザナヴィシウス監督)は、モノクロのサイレント映画だった。サイレント時代のハリウッドを舞台にしたラブストーリーだったが、トーキーより饒舌に物語るサイレントの表現力に改めて驚かされた。そして、嬉しいことに今年はスペインの『ブランカニエベス』に出会えた。グリム童話の「白雪姫」をベースに「シンデレラ」や「赤ずきん」「眠れる森の美女」の一部分を組み入れ、さらにスペインらしい闘牛とフラメンコで脚色するという、今まで観たことのない世界を存分に楽しませてくれる。
3Dデジタル全盛期の今、敢えてモノクロのサイレントで映画の可能性を拡げる挑戦をしているようにも思える。この斬新で画期的な作品には“本当は怖いグリム童話”のダークな心情が底流しており、もの悲しくも美しい映像に心が震えるような感動を覚えた。
【STORY】
スペイン最高の闘牛士と称えられたアントニオ・ビアルタ(ダニエル・ヒメネス・カチョ)は、決死の闘牛の末トドメを刺す寸前に猛牛の逆襲に遭う。それを見ていた身重の妻は急に産気づき、難産の末赤ん坊を産んで亡くなる。瀕死の重傷を負ったアントニオは妻の死を知ると絶望のあまり我が子を見ようともせず、退院して看護人(マリベル・ベルドゥ)と再婚してしまう。赤ん坊はカルメンシータと名付けられ祖母(アンヘラ・モリーナ)に育てられるが、フラメンコを楽しく踊っている最中、祖母も急死してしまう。
その後、カルメンシータ(ソフィア・オリア)は全身麻痺の父親と意地悪な継母が住む屋敷に引き取られるが、納屋に寝起きさせられた上に下働きとしてこき使われる。ある日継母の目を盗んで父親と親子の対面を果たし、華麗なる闘牛の技を父親から伝授される。そんな幸せな日々はあっという間に流れ、カルメンシータ(マカレナ・ガルシア)も美しく成長する。二人の密会を知った継母は、全財産を独り占めするため父親を殺し、さらにカルメンシータも森へ花摘みに行った際に殺すよう愛人に命じる。
瀕死状態のカルメンシータをマウス呼吸で蘇生させたのが小人のひとりだった。ショックで記憶を失った彼女に小人たちは“ブランカニエベス”(白雪姫)という名を付けて呼び、「こびと闘牛士団」の一員として共に旅をする。そして、天才闘牛士の娘らしく血が華麗なる闘牛を覚えていて、一躍“女闘牛士”として絶大な人気を誇るようになる。人気絶頂にいる闘牛場で、再び継母に狙われ、毒りんごを差し出される・・・。
成人したカルメンシータを演じたマカレナ・ガルシアの輝くような闘牛士姿が美しい。不運続きのカルメンシータがやっと掴んだ幸せの瞬間を、大きな宝石のような瞳で魅了する。そこは、怖ろしい継母を演じたマリベル・ベルドゥの凄みある存在との対比が大きな効果を生んでいる。影の動向により状況の進展を示したり、顔のどアップやテンポのいいスペイン風音楽の用い方など、サイレントならではの魅力満載の映画だ。是非一度体験して頂きたい。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://blancanieves-espacesarou.com/
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