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『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』

 
       

only-Lovers-550.jpg『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』

       
作品データ
原題 Only Lovers Left Alive 
制作年・国 2013年 アメリカ、イギリス、ドイツ 
上映時間 2時間03分
監督 監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
出演 トム・ヒドルストン、ティルダ・スウィントン、ミア・ワシコウスカ、ジョン・ハート、アントン・イェルチン、ジェフリー・ライト
公開日、上映劇場 2013年12月20日(金)~TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ(なんば、二条、西宮OS)他全国ロードショー

 


~汚染されてしまった“エデンの園”を彷徨うアダムとイヴ~


 

ジム・ジャームッシュ監督4年ぶりの新作は、21世紀に生きるヴァンパイアの姿を描いている。吸血鬼といえばゴシックホラーのイメージだが、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』や『トワイライト』シリーズ、『ビザンチウム』や『ぼくのエリ 200歳の少女』とそのリメイク『モールス』など、現代を生きる吸血鬼の悩める姿を描写した作品が多くなってきた。ゾンビ映画と違って、人の血を吸うこと、すなわち人を殺しながら生きるサガに苦悩する姿が哀愁を漂わせ、美しいビジュアルもプラスして、ホラーというよりラブストーリーの印象が強い。

ただ、突き抜け感のあるティム・バートン監督の『ダーク・シャドウ』だけは別格だが、本作も耽美的世界観で酔わせるあたりは異色作といえる。

今までどこかはずれた感のある人々が彷徨う姿をオフビートな世界観で描いてきたジム・ジャームッシュ監督。そんな彼が、吸血鬼も飲めないくらい現代人の血が汚染されてしまったことや、吸血鬼も時代に即した生き方をしなければいけないということを、皮肉交じりで語らせてユーモアたっぷり。イギリス文学史に登場する名前が要所要所で使われているのも、何世紀も生き抜いてきた吸血鬼たちの歴史を感じさせる心憎いアクセントになっている。

 


【STORY】

only-Lovers-3.jpgアメリカのデトロイトに住むアダム(トム・ヒドルストン)は、アンダーグランド界の伝説的ミュージシャンとして、ひとりひっそりと暮らしている。時折プレミアもののギターを持ったイアン(アントン・イェルチン)が訪れ、歴代アーティストの名前がポンポン飛び出す会話が始まる。それもそのはず、アダムは何百年も生きている吸血鬼なんだから。だが、調達係のイアンを襲うことはしない。病院勤務の医師の協力を得て清潔な血液を融通してもらっていた。

一方、アフリカはモロッコにあるタンジールに住んでいるイヴ(ティルダ・スウィントン)は、小説家マーロウ(ジョン・ハート)に清潔な血を融通してもらっていた。アダムとイヴは長年の恋人同士で、久しぶりにアダムに逢おうと、イヴはパリ経由の夜行便でデトロイトを訪れる。夜のデトロイトをドライブしたりチェスをしたり、血のアイスキャンディをなめたりと二人のラブラブの日々は続く。そこへアダムが嫌っているイヴの妹エヴァ(ミア・ワシコウスカ)が突然やってきて、80年前と同じようにまたもやトラブルを起こしてしまう。


 

only-Lovers-2.jpg何と言っても主演の二人が素晴らしい! ”血性”ならぬ”知性”と”エレガントさ”で、この世のものとは思えない魅惑的な存在感を放っている。特に、『オルランド』(1992年)で雌雄も世紀も超えて生きるひとりの貴族を演じたティルダ・スウィントンが強烈だ! 近年でも『ミラノ、愛に生きる』や『少年は残酷な弓を射る』などの衝撃的な作品が多い彼女は、言葉は悪いが“化け物”のような女優だ。アダムを演じた新鋭トム・ヒドルストン(『マイティ・ソー』でソーの弟ロキ役)より21歳も年上なのに、恋人同士がサマになっていて実にカッコイイ。まさにカリスマ吸血鬼そのもの!

自動車産業の衰退で近頃財政破綻したデトロイトと、起源を紀元前12世紀にまで遡るという古代都市タンジール(=タンジェ)という対称的な街に分かれて暮らすアダムとイヴを通して、人間社会の変化を歴史の一コマとして浮彫にしているようで面白い。汚染されていない清潔な血液が手に入らなくなった現代では、不死身の吸血鬼といえども、生き辛くなっているのは確か。これからのアダムとイヴをずっと見守っていたい気がするのは、彼らと同族になってもいいという表れなのか…!?。

ジム・ジャームッシュ監督作といえば、音楽スタイルにも大注目! 今回は特に、アダムがアンダーグラウンド界のミュージシャンということもあるので、こだわりのサウンドを楽しめる。タンジールの女性シンガー:ヤスミンの歌も、彷徨える異邦人の心もとなさを象徴しているようで印象深い。

(河田 真喜子

公式サイト⇒ http://onlylovers.jp/