『ルートヴィヒ』
原題 | LUDWIGⅡ |
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制作年・国 | 2012年 ドイツ |
上映時間 | 2時間23分 |
監督 | 監督・脚本:ピーター・ゼア、マリー・ノエル |
出演 | ザビン・タンブレア(ルートヴィヒ2世)、セバスチャン・シッパー(ルートヴィヒ2世晩年)、ハンナー・ヘルツシュプルング(エリザベート)、エドガー・セルジュ(ワーグナー)、フリードリヒ・ミュッケ(側近 |
公開日、上映劇場 | 2013年12月21日(土)~有楽町スバル座、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ二条 ほか全国順次公開 |
~“美貌の国王”から“狂王”と変貌してしまったルートヴィヒ2世の功罪とは?~
ドイツロマンチック街道の南端・バイエルン地方の人気観光地といえば、ノイシュバンシュタイン城をはじめとするリンダーホーフ城やヘレンキームゼー城だろう。それらは11世紀のヴァルトブルク城や17世紀のベルサイユ宮殿をイメージして19世紀のバイエルン国王ルートヴィヒ2世によって建てられた。プロイセンやオーストリア、フランスなどの列強国に挟まれ戦況下にある中、なぜこんな時代錯誤のお城を建設したのか。
ワーグナーの歌劇「ローエングリーン」や「タンホイザー」など騎士伝説に心酔し、理想ばかりを追い求めた国王ルートヴィヒ2世。18歳で即位して“ヨーロッパ一の美貌の国王誕生”と謳われたものの、国政より芸術を重んじ、度重なる築城や浪費によって財政を圧迫し国を弱体化させ、“狂王”と呼ばれるまでになった。太った歯抜け姿に変貌してしまい、40歳で謎の死を遂げるまでの苦悩に満ちた国王の内面に迫った歴史大作である。
映画ファンの中にはルキノ・ヴィスコンティ監督作『ルートヴィヒ』(1972年)を思い出される方もおられるだろう。旧作ではヘルムート・バーガーがルートヴィヒ2世を演じて、オーストリア王妃エリザベート(ロミー・シュナイダー)との関係や男色傾向にあった様子などを心の深奥から描出して、重厚な世界観を醸し出していた。イタリア・フランス・西ドイツ合作だったが、今回はリヒャルト・ワーグナー生誕200年記念ということもあり、ドイツ映画界が威信をかけて製作した力作となっている。
本作は、ノイシュバンシュタイン城やリンダーホーフ城、ヘレンキームゼー城でのロケを敢行し、美術・衣装などさらに豪華になって、躍動感のある明るい映像と軽妙な語り口で魅了する。父王の急死により国王としてまだ覚悟のないまま即位した若き国王が、理想を夢見るあまりことごとく政策に失敗して苦悩する様子を、鮮明に描いて実に分かりやすい。
若きルートヴィヒ2世を繊細に演じた主演のザビン・タンブレアは、プロのヴァイオリニストであり、舞台演劇界での活躍も目覚ましい現在29歳の新鋭。新たに甦ったルートヴィヒ2世に会いに行ってみてください。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://www.ludwig-movie.com/
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