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『ゆるせない、逢いたい』

 
       

  

yuru-ai-550.jpg『ゆるせない、逢いたい』

  

       
作品データ
制作年・国 2013年 日本
上映時間 1時間47分
監督 監督・脚本:金井純一
出演 吉倉あおい、柳樂優弥、新木優子、朝加真由美
公開日、上映劇場 2013年12月7日(土)~テアトル梅田、2014年1月18日(土)~京都みなみ会館、神戸元町映画館 にて公開

 


~もっと気持ちが通じ合えたのに、あんなことがなければ・・・~


 

yuru-ai-2.jpg一見、甘いラブロマンスかと思いきや、若い二人が紡ぐ初めて抱く恋心は、孤独を埋める信頼感を生み、ちょっとした行き違いから誤解を招き暴力へと進展してしまうという、あまりにも苦くて切ない想いがこみ上げる感動作である。また、挫折と後悔の果てに二人が交わした約束に心が爽やかな想いで救われる。新人の吉倉あおいと、『許されざる者』でベテラン俳優の中で鮮烈な印象を残した柳樂優弥という新鮮な顔合わせのふたりの感情を、瑞々しい映像ですくいとった意欲作でもある。

金井純一監督は、NPO法人《被害者加害者対話の会》から「海外では少年犯罪の加害者と被害者が会って話をしてその後を決める方法が一般的になってきている」ということを聞いて本作を手掛けたという。日本では当事者である本人たちの気持ちを確認することもなく裁判や法律で事件が処理されていくのが現状だ。そこで、当事者が対話にこぎつけるまで、それぞれが生きてきた環境や想いを肉付けして、現実と向き合ったラブストーリーを生み出した。

 


【STORY】

 yuru-ai-3.jpg高校生のはつ実(吉倉あおい)は、陸上部で仲間と練習に励む毎日を送っていた。父親を交通事故で亡くし、3人で住むはずだった新築の家で母親と二人暮らし。弁護士をしているしっかり者の母親(朝加真由美)は、娘を必至で守ろうとするあまり、はつ実の気持ちを確認することなく何でも自分で決めていた。ある日はつ実は古紙回収をしている少年・隆太郎(柳樂優弥)と知り合い、引っ越してきたばかりの街のことを教えてもらううちに親しくなる。隆太郎ははつ実が夜でも練習できるようにライティングされたグラウンドを用意したり、はつ実も予備校をサボって隆太郎と逢ったり、お互い心の隙間を埋める相思相愛の仲になる。

yuru-ai-4.jpgだが、予備校をサボったことで母親にとがめられ、携帯電話も壊れて隆太郎と連絡が取れずにいたら、隆太郎ははつ実が心変わりしたと誤解してしまう。止める母親を振り切り久しぶりに隆太郎と逢ったはつ実だったが、思わぬ隆太郎の暴行に身も心も傷付いてしまう。母親は事件として警察に届け出、隆太郎は強姦罪に問われることになる。お互い大好きだったのに、一方的な想いが強過ぎてはつ実の気持ちを無視して暴行してしまった隆太郎。少年事件として取り調べを受ける二人の気持ちは……。

 


金井純一監督はドキュメンタリーも撮っていただけあって、二人の心が解け合う過程を実に自然な流れで捉えている。友人と汗まみれになって部活に励む様子や、過保護な母親に反抗することもなく従う様子など、はつ実の抑えた気持ちをセリフではなく瑞々しい映像で表現している。また、事件後、隆太郎への複雑な想いを整理するためにも対話へと踏みきる勇気を見せるはつ実の姿や、それを見守る母親の表情など、従来のドラマにはない人物の気持ちに寄り添うきめ細やかな描写に、思わず胸が熱くなった。

yuru-ai-5.jpg何といっても、底知れぬ力を秘めたような柳樂優弥の表情に目が釘付けになった。最初の方のぶっきら棒な態度や母親に捨てられたと告白するシーン、さらにストーカーのように突っ立ているシーンや事件後初めてはつ実と対話するシーンなど、心情を不器用なまでに吐露する時の瞬発力には驚かされる。

(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://yuru-ai.com/

(C)S・D・P/2013「ゆるせない、逢いたい」