原題 | ALMANYA-WELCOME TO GERMANY |
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制作年・国 | 2011年 ドイツ |
上映時間 | 1時間41分 |
監督 | ヤセミン・サムデレリ |
出演 | ヴェダット・エリンチン、ラファエル・コスーリス、ファーリ・オーゲン・ヤルディム、アイクット・カヤシック、ペトラ・シュミット=シャラー他 |
公開日、上映劇場 | 2013年11月30日(土)~ヒューマントラストシネマ有楽町、12月21日(土)~テアトル梅田、2月8日~神戸元町映画館、春~京都みなみ会館 他全国順次公開 |
~おじいちゃんから見える移民一家の歴史と祖国トルコへの愛~
ドイツ映画だが、そこに映るのは魅力いっぱいのトルコの情景!ヨーロッパ全体が移民問題を抱えている今、こんなにもあたたかく、そして移民の歴史まで紐解いてみせてくれる映画は初めてだ。トルコからドイツに移り住んだイルマズ家の姿から、労働力としてドイツに貢献し、ドイツの生活に馴染みながらも、故郷への想いに揺れる移住民のリアルな感情が溢れ出る。ドイツでも30週間以上のロングランを記録した笑いと感動のヒューマンドラマだ。
ドイツがヨーロッパ中から労働力を集めていた60年代、トルコ東部のアナトリアに妻と子どもたちを残し、イルマズ家の主フセインは単身でドイツへ出稼ぎに向かう。その後家族で移住したイルマズ家は、現在孫にも恵まれ大家族になっていた。妻の願いでドイツ国籍を取得したフセインだったが、家族が集まった席で、「今度の休暇は全員で旅行に行こう」と声を上げる。トルコの故郷に家を買ったというフセインの「里帰り」宣言に家族は困惑したが、マイクロバスに乗り込んで家族全員で故郷を目指す旅が始まるのだった。
イスラム圏のトルコからキリスト教圏のドイツに移住し、まさに異国の文化の中で現地に馴染もうとするかつてのイルマズ家の様子を、トルコ系ドイツ人2世のヤセミン監督自身のエピソードも交えながら滑稽に描写。まだ外国人労働者が今ほど阻害されていない時代ならではのおおらかさも垣間見える。現在の話に戻り、イルマズ家を乗せたマイクロバスが素朴な自然に包まれたトルコの田舎道を滑走する姿は爽快そのもの! 理髪店でフセインが孫のチェンクに「トルコでは男も踊るんだ。腕を高く上げて」と異国情緒あふれるトルコ民族音楽にのせて、髭剃り中の姿で踊り始めたり、地元料理に舌鼓を打ったり(中には腹を壊す人もいたけれど)、厳格でまじめなドイツとは一線を画すトルコの風土を、私も肌で感じワクワクした。
国籍のことで学校でケンカをしてしまった6歳の孫息子チェンクや、イギリス人恋人との間の子どもを妊娠してしまった大学生の孫娘チャナンなど、親には言えない悩みをすくい取るフセインのおじいちゃん力はこの作品にあたたかい感動を与えてくれる。生まれ育った村に帰ろうとしたフセインの本当の理由を家族たちは知ることになるが、ドイツ暮らしに慣れてしまった彼らにとって、この故郷を辿る旅は、改めて自身のルーツを肌に刻む貴重なものとなったはずだ。そして故郷を誇りに思うフセインの気持ちを共有できたことだろう。実体験から紡がれたストーリーならではの躍動感と、半世紀近くに渡る移民の歴史がハートフルな物語に深い余韻を残した。(江口由美)
公式サイト⇒http://ojii-chan.com/
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