原題 | BEFORE MIDNIGHT |
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制作年・国 | 2013年 アメリカ |
上映時間 | 1時間48分 |
監督 | リチャード・リンクレイター |
出演 | イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー |
公開日、上映劇場 | 2014年1月18日(土)~ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿バルト9、シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、京都シネマ他全国ロードショー |
~伝説のロマンチックラブストーリー第三弾、今度は仁義なき夫婦バトル!?~
本当に指折り数えて待っていた、『恋人までの距離(ディスタンス)』(95)、『ビフォア・サンセット』(04)のその後を描く第三弾。今までのうっとりするようなラブストーリー的要素が影をひそめるのは当たり前だ。なぜなら、シリーズの主役であるジェシーとセリーヌは夫婦となり双子の親となったのだから。これほどまでにアラフォー夫婦の生々しい肉声がこだまする映画が今まであっただろうか。彼らと同年代を生きる者として、どこか自分に重なる部分を感じながら観てきた愛しき作品たちだが、本作が一番「その通り!」と膝を打ちたくなった。古代神話の舞台ギリシャの海辺町や遺跡などが、男女の根源を語りつくすシチュエーションにピタリとはまり、次から次へと繰り広げられる2人の会話シーンはまるで吸い込まれるように夢中になって見入ってしまう。
94年、ヨーロッパの電車中でアメリカ人ジェシー(イーサン・ホーク)と意気投合したフランス人セリーヌ(ジュリー・デルピー)。ジェシーの誘いに応じ、ウィーンの街を散策した一夜で2人は恋におち、再会を約束してそれぞれの家路に着く。<『恋人までの距離(ディスタンス)』>それから9年後、セリーヌとの忘れられぬ一夜を小説にし、作家として成功をおさめたジェシーは、訪問先のパリでセリーヌと再会。ジェシーは妻と息子ハンクが、セリーヌには恋人がいたが、ジェシーの帰りの飛行機までのわずかな時間、2人は9年間の想いをぶつけ合う。<『ビフォア・サンセット』>そして今、彼らは結婚し双子の娘に恵まれ、ギリシャで夏休みを過ごしていた。アメリカから休暇を一緒に過ごすためやってきたハンクを空港で見送り、複雑な心境のジェシーや、大きな仕事に踏み出すかどうか迷っているセリーヌなど、風光明媚なギリシャで少しずつ夫婦の歯車が狂い始める。
ジェシーとセリーヌの会話や、食卓での友人たちとの語らいなどから、彼らの恋愛観、セックス観から彼らが辿って来た前作以降の出来事が、見事にセリフだけで紡がれていく。この作品の醍醐味である会話の量と質の高さは相変わらずだが、人生経験を重ねた分、よりウィットに富み、何よりも生々しい等身大の感情が盛り込まれていて、男女問わず共感できる箇所だらけ。特にセリーヌが夜のホテルで啖呵を切った「独立心があって自由に仕事をしたい女性を主婦の枠に押し込めることほど無謀なことはない!」には全く同感!双子の母として失敗を続け、悪戦苦闘をしてきたセリーヌの堰を切ったようにあふれ出たジェシーへの叱責の言葉は手厳しいものだったが、それを言える相手であることは、やはり2人が素晴らしい夫婦であることの証なのだ。
まだウン十年も伴侶と一緒にいるのかと思うと「やり直すなら今」と思ってみたりもする40代。そんな我らを代表するかのようなジェシーとセリーヌの子育てや仕事との両立に苦悩しながら前進していく姿は、ラブストーリーのその後となる血の通った夫婦の物語として、本当に味わい深かった。何度でも観たくなる私の中の永久保存版に決定!
(江口由美)
公式サイト⇒http://beforemidnight-jp.com/
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