『ファッションを創る男―カール・ラガーフェルド―』
原題 | Lagerfeld Confidential |
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制作年・国 | 2007年 フランス |
上映時間 | 1時間29分 |
監督 | 監督・撮影・カメラ・録音:ロドルフ・マルコーニ |
出演 | カール・ラガーフェルド、ニコール・キッドマン、モナコ王妃カロリーヌ |
公開日、上映劇場 | 2013年11月16日(土)~シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町、11月30日(土)~シネマート心斎橋 にて公開 |
★フランスモード界に君臨する巨人、その素顔に迫る!★
半年に1度は刷新されるファッション界をリードしていくには、相当の才能とカリスマ性が必要だろう。ジバンシーやイヴ・サンローランやディオールなどの大物デザイナー亡き後、瀕死のシャネルを復活させたカール・ラガーフェルド。妥協を許さず、常に進化し続け、明確なビジョンに邁進するパワーは尋常ではない。早くも伝説的存在となっている。そんな彼の人物像に迫ったドキュメンタリー映画が『ファッションを創る男―カール・ラガーフェルド―』だ。監督のロドルフ・マルコーニは多くの監督が取材を希望する中ようやく取材を許され、3年に渡る取材を敢行。その中で浮かび上がるラガーフェルドの人物像は、我々の創造を越える“怪物”ぶりだ。
高級ブランドに縁遠い私は、彼のプライベートブランド「カール・ラガーフェルド」の服を買うようになって初めて彼の名を知った。クールなストレートラインがマニッシュなシンプルデザインを好む私にはお気に入りだった。だが、彼が低迷していたあの高級ブランド《シャネル》を復活させ、他にもクロエ、フェンディのチーフデザイナーも務めているスーパーデザイナーということは知らなかった。
いつもシルバーホワイトの長髪を後ろで束ね、細身のスーツにカサ高いホワイトカラー(付襟)を付け、黒のサングラスをかけたカール。「まるで神父のようだ」というマルコーニ監督の言葉に、「中身は正反対だけどね。不信心者のための神父かもね」とジョークで返す。潔癖症だが、仕事場は雑然としている方がいい。電話魔で、10台以上はあろうかと思えるスマホの充電台。無数の本や資料がうず高く積まれたパリの自宅。「男性が身に付けるアクセサリーはクロムハーツに限る」と、数多くの指輪やネックレスがチェストの上に無造作に置かれている。まるで鎧を身にまとうように、スーツやアクセサリーを身に付けて出掛ける。それも自己演出のひとつなのか、彼自身、どれが本当の自分なのか分からないと言っている。
1933年、ドイツの北西部デンマークとの国境近い町で生まれたカール。あまりにも田舎過ぎて戦争の影響は殆ど受けなかったらしい。子供スターのように甘やかされて育ち、特に母親の影響を強く受けているようで、何かにつけて、「母は…」を繰り返す。11歳で男性からも女性からも性的虐待を受けたが、それについて悩むことはなかったらしい。母親曰く、「そんな変な服装でませた口をきいていたら、その手の人が勘違いするのは当然」と。さらに同性愛について「髪の色が違うのと同じ」とまあ、当時としてはリベラルな考えの母親だったようだ。
さらに、「ファッションは人生の一部であって全てではない。社会的正義とは程遠い世界で、不公平は当たり前。競争が激しく、はかなく、危険で理不尽」と断言する。常に注目を浴び、多くのスタッフに囲まれた華やかな日々のようだが、孤独になれる時間が最も重要だという。だから愛する人がいても同居はしない。彼にとって孤独は勝ち取るものだと。常に未來を見つめ、時代に順応し走り続けるカール。自己中心的で妥協を許さない処がカリスマと言われる所以だろうが、自らカメラを構える姿やデザイン、ミーティング、社交など、まさに人間業とは思えない仕事ぶりに圧倒される。カール・ラガーフェルドという型破りな巨人の本性が垣間見れる、とても貴重な映画だ。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://www.alcine-terran.com/lagerfeld/
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