『鑑定士と顔のない依頼人』
原題 | La migliore offerta (The Best Offer) |
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制作年・国 | 2013年 イタリア |
上映時間 | 2時間11分 |
監督 | 監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ(『ニュー・シネマ・パラダイス』) |
出演 | ジェフリー・ラッシュ (『英国王のスピーチ』 『シャイン』)、 ジム・スタージェス (『ワン・デイ 23年のラブストーリー』『クラウド アトラス』)、 シルヴィア・ホークス、 ドナルド・サザーランド (『ハンガー・ゲーム』 『プライドと偏見』) |
公開日、上映劇場 | 2013年12月13日(金)~TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館、TOHOシネマズ(梅田、なんば、二条、西宮OS)、シネ・リーブル神戸、他全国順次公開 |
★深まる謎とみごとなドンデン返し!心を奪われる珠玉のミステリー★
『ニュー・シネマ・パラダイス』で大ブレイクしたジュゼッペ・トルナトーレ監督も、いつの間にか還暦間近のお年になったが、作品そのものもベテランの域に入ったことを証明しているのがこれだ。幾つもの伏線、物語を根底から揺さぶるドンデン返し、観客の感性に挑戦するかのように疑問符を投げかけるラストシーン。近年私が観たミステリー映画でも、必ず上位に入ってくる素晴らしい仕上がりだ。
主人公は、老練な美術鑑定士であり、世界を股にかけるオークショニアでもあるヴァージル・オールドマン。独身で、全く生活感のないホテルのような家に住み、ケータイも人間も嫌い。とりわけ、女性は苦手である。だが、彼には人知れぬある楽しみがあった。自邸の秘密の部屋、そこには、友人を利用して格安の価格で入手した数々の名画が飾られている。しかも、すべてが女性の肖像画である。それらを彼は舐めるように眺め、味わう、生身でない女性とのメイク・ラヴを楽しむように。そんな平安の日々を破ったのは、ある一人の女性からの鑑定依頼だった…。
なかなか顔を見せない依頼人への好奇心は、ヴァージルだけでなく、観る者の心の中でもどんどん膨れ上がっていく。“広場恐怖症”という彼女の病気、18世紀の幻の機械人形、驚異的な記憶能力を披露する不思議な女など、すべてが謎めいていて、最初は怒り、次第にとまどい、やがては熱望する主人公を翻弄するようだ。
クライマックスに至って、ある真実が明らかになった時、私たちもヴァージルと同様の思いを抱く。何を見逃していたのか、なぜわからなかったのか、誰によってそれが為されたのか。だから、これから本作を観る方は、用心深くあったほうがいい。目をけして休ませてはいられない。私自身も、再度観て、置かれてあった“鍵”の在りかを確認したくなる。
トルナトーレ監督作品とはなじみ深いエンニオ・モリコーネによる音楽は、いつもながらに情感の豊かさにあふれ、物語にさらなる深みを与えているし、主演のジェフリー・ラッシュも、独特の人物像をみごとに表出させている。今ぜひとも観るべき一作だ。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://kanteishi.gaga.ne.jp
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