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『燦燦―さんさん―』

 
       

sansan-550.jpg『燦燦―さんさん―』

       
作品データ
制作年・国 2013年 日本
上映時間 1時間21分
監督  脚本・監督:外山文治
出演 吉行和子、山本學、宝田明、田川可奈美、宮田道代、田内一子、都村敏子、竹居正武、遠山陽一、百本夏繪、たくしまけい
公開日、上映劇場 2013年11月16日(土)~ヒューマントラストシネマ有楽町、11月23日(土)~テアトル梅田、京都シネマ、神戸元町映画館 他にて公開

 


★“シルバー婚活”に学ぶ、人生の楽しみ方★


 

sansan-3.jpg こんな明るく楽しい高齢化社会を描いた映画を33歳の監督が撮ったなんて、邦画界にとっては嬉しいニュースだ。現在78歳の吉行和子主演の映画『燦燦―さんさん―』は、シルバー世代だからこそ実感できる「人生は楽しまなきゃ!」的な生き方を優しく教えてくれる。別にラブストーリーは若者の独壇場とは限らない。高齢化に伴って、もっと“ジジババ”がときめいたり、すったもんだのラブストーリーが増えてもいいはずだ。むしろ大人の想いが紡がれるような映画が作られてこそ、成熟した文化といえるのでは?

 最近では世代の区別がつきにくくなっている。30歳過ぎても若者として見られたいだろうし、60歳になって年寄り扱いは嫌だろう。若くは見られたいが、果たして生き様はどうだろうか。年齢と共に衰えるのは容姿や体力ばかりではない。積極的な考え方や感受性や行動力も退化しているのでは?本作の主人公のような77歳の婚活は、年齢に関係なく、「幸せは自分の手でつかむんだ!」というぐらいのポジティブさが必要な気がする。


【STORY】
 sansan-2.jpg 77歳の鶴本たゑ(吉行和子)は10年間も夫の介護をして3年前に未亡人となり、団地で独り暮らし。息子家族に電話を架けてもゆっくり話を聞いてもらえない。亡き夫の親友・森口慎二(宝田明)が主催する老人クラブ「燦燦会」には本音で語れる友達はいるが、何だか物足りなさを感じていた。ある日、無料相談の看板に惹かれて結婚相談所へ。たゑの「残りの人生を輝かせてくれるパートナー募集」というビデオメッセージに数名の男性が応募 してくる。

sansan-4.jpg 最初場違いな年齢のたゑの登場に呆れていた相談員の橘(田川可奈美)も、相手に求め過ぎない素直で謙虚な婚活態度に感心して協力していく。そんな中、熟年離婚したという颯爽とした能勢雄一郎(山本學)が現れる。彼に「自分の思いと求めているものが似ている」と感じたたゑは、息子家族の反対をよそに次第に本気モードを示していく。そんなたゑの婚活を快く思わないのは、長年たゑに片思いをしている森口だった。


sansan-5.jpg 何と言っても吉行和子(78)を始め、宝田明(79)や山本學(76)というベテランの風格とキャラクターの性格の的確な表現力が素晴らしい。脇を彩るのは彩の国さいたま芸術劇場監督の蜷川幸雄が率いる「さいたまゴールド・シアター」のメンバー。シルバー世代だけの劇団だが、「シルバーではなくゴールドだ!」と他の劇団には負けないパワフルな演技で観客を圧倒する。

 離婚や死別などで独り身の高齢者が、新たな伴侶を求めることは経済的にも健康的にもいいことだと思う。独り寂しく生気の無い生活をするくらいなら、再婚した方がいいだろう。だが、独り身を好む場合もあるので、人それぞれの生き方を尊重できる社会であって欲しいと願う。だって、自分たちもあっという間にシルバー世代の仲間入りしちゃうんだからっ!

(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://sansan-eiga.com/

(C)2013 埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ

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