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『清須会議』

 
       

kiyosukaigi-550.jpg『清須会議』

       
作品データ
制作年・国 2013年 日本
上映時間 2時間18分
原作 三谷幸喜 「清須会議」(幻冬舎文庫)
監督 監督・脚本:三谷幸喜
出演 役所広司  大泉 洋  小日向文世  佐藤浩市 妻夫木聡 浅野忠信 寺島 進 でんでん 松山ケンイチ 伊勢谷友介 鈴木京香 中谷美紀 剛力彩芽 坂東巳之助 阿南健治 市川しんぺー 染谷将太 篠井英介 戸田恵子 梶原 善 瀬戸カトリーヌ 近藤芳正 浅野和之 中村勘九郎 天海祐希 西田敏行
公開日、上映劇場 2013年11月9日(土)~全国東宝系ロードショー

 


   ★三谷幸喜ならではの、「どえりゃあ戦国時代絵巻だで!」★ 


 

kiyosukaigi-1.jpg 構想40年以上、三谷幸喜が子供の頃に魅了された「清須会議」。「本能寺の変」(1582年)で織田信長と長男・織田信忠が亡くなり、織田家継承問題と謀反人・明智光秀の領地分配を決める会議が清須城(愛知県清須市)で行われた。日本史上、会議で歴史が動いた最初だそうな。ポスト織田信長=天下獲りに繋がる天下分け目の「清須会議」は、柴田勝家と羽柴秀吉を通して、世代交代の瞬間と、新しい時代のリーダーの器を示しているようでとても興味深い。

 それを、人気劇作家であり演出家、そして映画監督でもある三谷幸喜がそれまでに培ったすべてを賭けて豪華絢爛の戦国時代絵巻に創り上げた。超個性的で芸達者なオールスターキャストに、美術も衣裳もその個性に合わせるというこだわりを見せ、ドラマを盛り上げる音楽も映像も、夏空に勢いよく湧き立つ雲のようにワクワクさせるものばかりだ。

 


【あらすじ】

kiyosukaigi-4.jpg 1582年、明智光秀(浅野和之)の謀反による「本能寺の変」勃発。織田信長(篠井英介)と後継者の織田信忠(中村勘九郎)が自害に追い込まれ、その後すぐに明智光秀は羽柴秀吉(大泉洋)に「山崎の合戦」で討ち取られる。カリスマリーダーを失った織田家家臣団は、織田家継承問題と謀反人・明智光秀の領地分配を決める会議を清須城で開催。織田家四天王と言われる柴田勝家(役所広司)と丹羽長秀(小日向文世)に羽柴秀吉、そして関東出征中で間に合わない滝川一益(阿南健治)に代わり池田恒興(佐藤浩市)が参列。

kiyosukaigi-2.jpg 盟友・柴田勝家と丹羽長秀がタッグを組み、織田家三男の信孝(坂東巳之助)を推す。一方羽柴秀吉は、織田家筆頭の柴田勝家の陣営を崩そうと策を弄しながら、利己的な池田恒興を見方に付け織田家次男の信雄(のぶかつ・妻夫木聡)を推す。夫の浅井長政と息子を秀吉に殺され恨み積年のお市の方(鈴木京香)は、秀吉攻略のため自分へ好意を寄せる勝家を支援する。武士として尊敬を集める人格者・勝家に対し、人望もなければ卑しい出自の秀吉は、民衆には人気があり「人たらし」の異名を持つ。妻・寧(中谷美紀)の協力を得て家臣たちの心を掴もうと大判振る舞いの宴を催し、あの手この手で会議のリーダーシップを執ろうとする。いよいよ会議本番の日。織田家の行方は?日本の新しいリーダーは?


 

 歴史上の事実なので会議の結果を知りつつも、評定の場で何が起こったのか? 誰がどう動いたのか? 緊迫する中での表情は? 歴史上の人物たちが生身の人間として現代に甦る姿に、予想以上に興奮する。

kiyosukaigi-3.jpg 勇猛果敢で戦場でしか生きられないような柴田勝家は、加齢臭ぷんぷんのむさ苦しい出で立ちだが、お市の方の前ではデレデレ腑抜けになってしまう。冷静沈着で智略に長けた丹羽長秀を頼りにし、絶大な信頼を寄せていた。ところが、その丹羽長秀をも説き伏せ、すべてを優位に運ぼうとする秀吉の悪知恵には舌を巻く。見ているこちらも、思わず「なるほど!」と頷いてしまうほどの説得力だ。それをまた「アーイアイおさるさんだよ~♪」みたいな大きな耳を付けた大泉洋が、抜け目なく賢く立ち回るから、可笑しさ倍増。

 

 kiyosukaigi-5.jpg鼻筋の通った織田信長の肖像画から、織田家の人間と一目で分かるよう、信長役の篠井英介と弟役の伊勢谷友介以外の織田家の男子は皆付け鼻をしたという。勝家をたらし込むお市の方を演じた鈴木京香は眉毛なしのお歯黒で“妖怪雪女”のようで、松姫を演じた剛力彩芽はおでこ丸出しの“おたふく顔”。寧を演じた中谷美紀に至ってはイモトもびっくりの太眉で“おてもやん”していた。大勢の人物が登場するため、其々の個性や立場が一目で分かるようビジュアルにもこだわった三谷版時代劇は、無常な戦国時代を明るいエンターテインメントに変えて、大いに楽しめる。

 智略戦となった「清須会議」も無事に終わる。秀吉が夫婦で土下座して勝家を見送るハッピーエンディングにも、いずれは秀吉に滅ぼされる運命にあることを思えば、正論だけでは生きられない世の中の理不尽さや、明日をも知れぬ戦国時代の無常さに、改めて悠久の歴史の流れを感じずにはおられなかった。

(河田 真喜子

 

公式サイト⇒  http://www.kiyosukaigi.com

(C)2013 フジテレビ 東宝

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