『もったいない!』
原題 | Taste the Waste |
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制作年・国 | 2010年 ドイツ |
上映時間 | 1時間28分 |
監督 | バレンティン・トゥルン |
公開日、上映劇場 | 2013年11月2日(土)~テアトル梅田、11月9日(土)~神戸元町映画館、1月~京都シネマ にて公開 |
~誰でも今すぐ実行できるエコ! 無駄を省いてスッキリとスリムな食生活を~
世界で生産される食糧の半分近くが捨てられている! しかも、焼却処分で二酸化炭素を、埋設処分でメタンガスを発生させ、オゾン層や地球環境を破壊している! 廃棄されることで物価上昇を招き、貧しい人々は増々食料が買えず飢えてしまう! 廃棄される食糧で、世界の飢餓に苦しむ人々を3度も救える! なんてことを知っていましたか? 毎日欠かさず食べている食料の実態を知って、すぐにでも節約したくなるドキュメンタリー映画だ。今まで様々な啓発映画を見てきたが、こんな衝動にかられたのは初めて!
エコ意識の高いドイツ人のバレンティン・トゥルン監督は、はじめ食料が無駄に捨てられている実態をテレビ用として撮っていた。撮影が進むにつれその深刻さ知り、世界中の人々の意識を変えるためにも映画化の必要性を実感したという。
初め、ゴミ箱の中からまだ食べられる物や使える物を物色しているゴミ箱ダイバーが紹介される。彼らはホームレスではなく、来た時より綺麗にして帰るのを流儀とし、ゴミを営利目的ではなく、自分が食べる分だけ頂戴する生活を実践している。だが、無駄なゴミは家庭からよりスーパーマーケットや卸市場のような所で大量に発生していることが分かる。賞味期限や消費期限に縛られながら、常に新鮮で大量の商品を提供しなければならない。売れ残りは勿論だが、期限が切れていない物もどんどん廃棄される。あ~もったいない!
EUやアメリカや日本などの先進国では、厳しい商品規格があり、品質・栄養面では何ら劣らない農産物を大量に廃棄している。売れる分だけを製造すればいいものを、大量に陳列するために大量に製造しては廃棄。精魂込めて育てた農産物も、規格外だとそのまま畑に放置するか廃棄。生産者側にとってもやるせない気持ちになる。
廃棄処分されるパンをバイオエネルギーに転換しているパン製造会社の社長は、ドイツ中のパン屋がこれをすると原発1基減らせると語る。この映画は2010年製作なので、当時の「原発推進政策」を執っていたドイツ政府への提言も込められている。2011年の福島原発事故以降、メルケル首相は「脱原発政策」に切り替えるという英断を下したことは周知の通り。
映画は本国ドイツだけでなく、EU諸国やバナナの生産国カメルーン、アメリカや日本での実態を紹介している。特に、バナナの生産国カメルーンでは、先進国の厳しい規格に合ったバナナを生産するため農民から土地を無償で取り上げ、深刻な死活問題を拡大している。生産国なのにバナナも食べられない人々。なのに、先進国ではちょっと熟し過ぎているといって数トン単位で大量に廃棄されている。
本作のいいところは、思わず「もったいない!」と叫びたくなる現状だけでなく、どうすればいいのかと解決に結びつくようなこともしっかりと紹介している。例えば、日本の生ゴミ処理については、飲食店で廃棄される生ゴミだけを集荷して、家畜の飼料に加工している例だ。それを家畜が食べて、やがてその肉は再び人間の口に入る。食料のリサイクルだ。食料の60%以上を輸入に頼っている日本にとっては、生ゴミも貴重な資源という意識の高さを示している。
また、大都会ニューヨークでの子供に対する食育の様子や、イタリアでの廃棄食料品だけを使った大食事会の様子など、多くの人々が意識改革に向けて尽力している様子が捉えられている。この映画を見て、すぐにでも冷蔵庫の中を調べてみたくなった。不要な物であふれていないか、冷蔵庫をゴミ箱にしてしまってはいないか、無駄な物を買ってはいないか、また賞味期限の新しい物ばかりに気をとらわれて買い物をしていないかなど。
私たちの意識をほんの少し変えるだけで無駄は省け、廃棄処分にされる量を減らせる。物価上昇を抑え、飢餓を助長することもなくなる。エネルギーを節約し地球環境に優しい生活ができる気がする。私にもあなたにも誰にでもやれる事は沢山あるはずだ。
(河田 真喜子)
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