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『四十九日のレシピ』

 
       

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作品データ
制作年・国 2013年 日本
上映時間 2時間9分
原作 伊吹 有喜著『四十九日のレシピ』ポプラ社刊
監督 タナダユキ 
出演 永作博美、石橋蓮司、岡田将生、二階堂ふみ、原田泰三、淡路恵子他
公開日、上映劇場 2013年11月9日(土)~新宿バルト9、梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、TOHOシネマズ西宮OS、Tジョイ京都他全国ロードショー


~亡き母の「レシピ」が導くカラフルな人間模様と、明日への一歩~
 

 永作博美は本当にいい女優になったなと思う。前作『八日目の蝉』で不倫相手の赤ちゃんを誘拐し、わが娘として育てながら逃亡生活を続ける女を演じ、高い評価を受けたことは記憶に新しい。今回も不妊の悩みを抱え、夫の浮気で居場所をなくしてしまう辛い役回りを真摯に演じている。『ふがいない僕は空を見た』のタナダユキ監督が、家族やさまざまな人に支えられ、自分の道を見つけていく女性の姿を、印象深い登場人物と共にあたたかい眼差しで描き、静かな感動を呼ぶ。

 

49-2.jpg 百合子(永作博美)は、夫(原田泰三)の不倫と愛人の妊娠に耐えられず、離婚届を突きつけ、母亡き後一人で暮らしている父良平(石橋蓮司)のもとに帰る。妻を亡くし、がらんとした家で一人ポツンと佇む良平の哀愁を帯びた姿にわびしさを感じるのも束の間。物語はイモと名乗るゴスロリギャルの登場で、一気に明るく彩られていく。イモのファンキーな外見と裏腹に繊細な内面、依存症だった過去との葛藤など深みのあるキャラクターを二階堂ふみが独特の空気感で演じ、新たな魅力がスクリーンに弾けている。頑固な良平や、最初は不快感を持っていた百合子を、四十九日の大宴会プロジェクトに巻き込んでいくイモの手腕に思わず脱帽してしまう。

 

49-3.jpg 岡田将生演じる日系ブラジル人のハルが加わり、母が遺した「レシピ」に導かれるように、年代もバックボーンもバラバラな4人の大宴会準備と宣伝活動が始まる。百合子は、反発してうまく向き合えなかった母の年表作りを提案したものの、空白だらけなのを見て、「子どもを産まない女の人生なんて空白ばかり」とつぶやく。しかし、その年表の空白が埋まるとき、母の本当の人生と自らの人生への可能性に百合子は初めて気付くのだ。

 

49-4.jpg ファンタジーのようなイモ、ハルという異色のキャラクターを登場させる一方、追い詰められた百合子の苦悩を気にも留めず、ズバズバと本音を言う親戚の珠子(淡路恵子)の存在や、愛人と夫との三角関係など現実的な問題にも触れ、癒される話だけに終わらせないのがタナダユキ監督らしい。どんなシビアな状況に向き合っても「人とのつながり」を大切にすることで、一歩前に踏み出せる。母の心の声の詰まった「レシピ」が百合子や良平に伝えたのは、自らが大事にしてきた小さな幸せ、そして明日への一歩だった。(江口由美)

公式サイト⇒http://49.gaga.ne.jp/
(C) 2013映画「四十九日のレシピ」製作委員会