『遙かなる勝利へ』
原題 | Utomlennye solntsem 2 |
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制作年・国 | 2011年 ロシア |
上映時間 | 2時間30分 |
監督 | 監督・脚本:ニキータ・ミハルコフ |
出演 | ニキータ・ミハルコフ,オレグ・メンシコフ,ナージャ・ミハルコワ |
公開日、上映劇場 | 2013年11月~銀座シネスイッチ、2014年1月18日(土)~シネマート心斎橋、1月下旬~京都シネマ、2月~神戸元町映画館 他全国順次公開 |
~いつかきっと昇り始める,本物の太陽が~
前作「戦火のナージャ」(2010,露)の続編で,その前の「太陽に灼かれて」(1994,露・仏)を含めて三部作の完結編となる。前作同様,スターリンの赤軍大粛清という大きな歴史の動きの中で,ロシア革命の英雄コトフやその娘ナージャを巡る各場景が独立した短編のような輝きを放っている。コトフの前に彼の運命を変えたドミートリが現れ,コトフの妻マルーシャの消息が明らかになり,コトフとナージャの衝撃的な再会で終幕となる。
要塞に立て籠もるドイツ軍と塹壕に身を隠すロシア軍が対峙しており,膠着状態が続いているようだ。上官から理不尽にも正面攻撃を命じられた懲罰部隊にコトフがいた。前進すればドイツ軍の砲火を浴び,退却すればロシア軍(督戦隊)の銃撃を受ける。まるでコトフの人生を象徴するような過酷な状況である。ここでも強かに生き抜くコトフの姿が描かれるが,それがかえって後にスターリンの命令を遂行するコトフの痛ましさを増幅する。
ナージャは,看護兵として従軍し,負傷兵を乗せたトラックの荷台に一人の妊婦を乗せて走る。ドイツ軍の空爆を受けるが,妊婦が産気づき,同乗する負傷兵たちに助けられ何とか出産する。悲壮な中で何とか連携する姿は滑稽でもあるが,人間の生命力の底知れない強さが伝わってくる。カメラが周囲に目を向けると,他の車両は壊滅していた。ナージャの車両だけが助かったことを知り,人間には奇跡を生み出す力が確かにあると実感する。
コトフは,ドミートリに導かれて郊外の別荘に戻るが,第一作前半のような牧歌的な美しさは戻らない。そこには懐かしい香りが漂っていたが,何とも言えない違和感があり,戦場とは違った緊迫感に包まれていた。「朱に染まった波の間から偽りの太陽が昇り始める」というフレーズが哀切に響いてくる。終幕では,偶然がコトフに幸運をもたらすという淡い期待は消えるが,悲痛と言うよりも,来るべき穏やかな時代がほのかに感じられる。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://www.haruka-v.com/
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