『トランス』
原題 | TRANCE |
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制作年・国 | 2013年 アメリカ・イギリス R15+ |
上映時間 | 1時間42分 |
監督 | ダニー・ボイル |
出演 | ジェームズ・マカヴォイ、ヴァンサン・カッセル、ロザリオ・ドーソン |
公開日、上映劇場 | 2013年10月11日(金)~TOHOシネマズ シャンテ、TOHOシネマズ(梅田、なんば、二条、西宮OS)、OSシネマズミント神戸、他 全国ロードショー |
~催眠療法(トランス)がもたらす危険な記憶の罠~
まずこの興奮に満ちた映画を監督したダニー・ボイル監督について触れたい。1996年ユアン・マクレガーの出世作となった『トレインスポッティング』で世界中をトリップ状態にして大ヒット、 2008年『スラムドッグ$ミリオネア』でアカデミー賞8部門受賞、2010年『127時間』では数々の賞レースを賑わせ、さらに、2012年にはロンドンオリンピック開会式の総監督を務め、ジェームズ・ボンドがエリザベス女王を空からメインスタジアムへエスコートするという、イギリスらしい風格を保ちつつも奇想天外な演出で世界中を驚かせた。そのスピーディーな映像と音楽のマジックは常に独創的でウィットに富み、我々を未体験ゾーンへと誘ってくれる。
そんなダニー・ボイル監督の最新作は、精神、とりわけ人の記憶「潜在意識」をテーマとしたサスペンススリラー。今現実だと思っている自分の意識を思わず疑いたくなるような、記憶だけで作られた人間社会を懐疑的に見てしまいそうになる映画だ。
スペインの画家ゴヤの傑作「魔女たちの飛翔」が40億円相当で落札された途端、潜んでいた強盗団に襲われる。競売会場のスタッフ:サイモン(ジェームズ・マカヴォイ)は、マニュアル通り絵を金庫に仕舞う直前に強盗団のリーダー:フランク(ヴァンサン・カッセル)に奪われる。逆襲しようとしたが頭を強打され記憶喪失となる。退院と同時に強盗団に誘拐され、全く事情が理解できないまま拷問されるがらちがあかない、。そこで、失われた記憶を取り戻そうと催眠療法士:エリザベス(ロザリオ・ドーソン)の治療を受けることになる。
ところが、エリザベスはサイモンが絵画強奪事件に関与しているとも知らず彼の記憶を回復させようとするが、単に絵画の行方を追うだけの催眠療法(トランス)では済まなかったのだ。サイモンの複雑に区切られた記憶が少しずつ解き明かされる度に危険な状況に陥っていく。それは、誰も予想できなかった記憶の迷宮に飲み込まれるようなトランス状態になっていくのだ。
主な登場人物である競売会場のスタッフ:サイモンと、強盗団のリーダー:フランク、催眠療法士:エリザベスの3人の立場がコロコロ変わっていくところが面白い。ある時は被害者に、ある時は犯罪の主導者に、そしてある時はエリザベスを巡る恋の争奪戦もあり、3人それぞれが悪人にも善人にもなるというエキセントリックな展開に目が離せなくなる。今年だけでも本作の他に『ビトレイヤー』『フィルス』と主演作が公開されるイギリスのジェームズ・マカヴォイ、フランスのヴァンサン・カッセル、アメリカのロザリオ・ドーソンと、それぞれが情熱とセクシーさを秘めた得体の知れない存在感でぶつかり合う。
それをボイル監督の長年の協力者で、『スラムドッグ$ミリオネア』の撮影監督:アンソニー・ドット・マントルや『トレインスポッティング』の脚本家:ジョン・ホッジが再集結し、さらにロンドンオリンピックも手掛けたリック・スミスが音と音楽で肉付けしている。エミリー・サンデーや『ボーン・レガシー』の主題歌を歌ったModyも参加した本作のサントラもまた素晴らしい!
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://www.trance-movie.jp
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