原題 | BEHIND THE CANDELABRA |
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制作年・国 | 2013年 アメリカ |
上映時間 | 1時間58分 |
監督 | スティーヴン・ソダーバーグ |
出演 | マイケル・ダグラス、マット・デイモン、ロブ・ロウ他 |
公開日、上映劇場 | 2013年11月1日(金)~新宿ピカデリー、なんばパークスシネマ、109シネマズHAT神戸、MOVIX京都 他全国ロードショー |
受賞歴 | 第65回エミー賞 作品賞、監督賞、主演男優賞(マイケル・ダグラス)、特殊メイク賞(矢田弘)他 最多11部門受賞 |
~スティーヴン・ソダーバーグが描くアメリカの美輪明宏、その愛と孤独~
宝塚歌劇を見ているかのような煌びやかな衣装に身を包み、跳ねるようなタッチで軽やかにピアノを奏でる。圧倒的な存在感と、ユーモアセンス溢れたトークで観客を魅了するピアニスト、リベラーチェ。ラスベガスでのショーに出演する一方、テレビ番組でも初めてカメラ目線を送ったエンターテイナーとしてアメリカで華麗なキャリアを積み上げてきたリベラーチェの晩年の恋と衝撃の死が、スクリーンに甦る。『オーシャンズ』シリーズのヒットメーカー、スティーヴン・ソダーバーグが、マイケル・ダグラスとマット・デイモンを迎え、リベラーチェが死ぬまで隠し通した同性愛の喜びや苦しみを、時にはスキャンダラスに時には甘美に浮かび上がらせる。
1977年、ラスベガス。キラキラ輝くグランドピアノに、トレードマークの枝付き燭台を置き、豪華絢爛なステージを披露するリベラーチェ(マイケル・ダグラス)。初めて彼の舞台を見て、衝撃を受けたスコット(マット・デイモン)は、リベラーチェの楽屋を訪れ、自宅に招かれるようになる。心を赦し合える間柄となり、住み込みの個人秘書としてリベラーチェに雇われたスコットは、肉体関係を持ち、服や車など欲しいものを与えられ、ついにはリベラーチェの舞台運転手として一緒にステージに立つまでになったのだが・・・。
マイケル・ダグラス演じるリベラーチェは、スターとしてのオーラを放ちまくり、エレガントな身のこなしや、ホモセクシュアルらしい言動もキュートに映る。一方、スコット演じるマット・デイモンのロン毛金髪姿は、どこか笑いを誘う。おまけに、リベラーチェの願いで彼そっくりの顔に整形させられたり、太ったら格好悪いとカリフォルニアダイエットさせられたり、一人仮葬大会状態だ。屈辱的な整形も「リベラーチェから与えられる愛の大きさに比べれば大したことはない」と納得するまではよかったが、孤独だった2人が寄り添い愛をはぐくんだ幸せな日々は長く続かない。
まだホモセクシュアルを公言することがタブーであった時代、敬虔なカトリックだったリベラーチェは「懺悔しても、懺悔しなくても地獄」と、周りを欺いてでしか自分らしく生きられないことに悩んだエピソードも語られる。1985年ロック・ハドソンがエイズで亡くなったと報じられ、大スキャンダルとなった後だからこそ、自分がエイズを患っていることを死後も隠そうとしていたリベラーチェ。ホモセクシュアルであると公言できず亡くなった彼の存在が、同じホモセクシュアルでピアノマンでもあるエルトン・ジョンらに大きな影響を与え、HIV研究の資金集めや啓蒙運動に繋がっているのだ。全てを捧げる愛を全力で表現したマイケル・ダグラスとマット・デイモンの演技合戦だけでなく、久々の登場にして、主役二人以上にクセモノの形成外科医を演じたロブ・ロウの怪演にも注目したい。スティーヴン・ソダーバーグ監督長期休養前の作品は、今までになく直球ど真ん中のラブストーリーだった。
(江口由美)
公式サイト⇒http://liberace.jp/
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