『ふたりのアトリエ~ある彫刻家とモデル』
原題 | El artista y la modelo |
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制作年・国 | 2012年 スペイン |
上映時間 | 1時間45分 |
監督 | 監督・脚本:フェルナンド・トルエバ |
出演 | 出演:ジャン・ロシュフォール,アイーダ・フォルチ,クラウディア・カルディナーレ,ゲッツ・オットー,チュス・ランプレアヴェ,クリスチャン・シニジェ |
公開日、上映劇場 | 2013年11月16日(土)~Bunkamuraル・シネマ、12月7日(土)~シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、近日~京都シネマ にて公開 |
~時代を超えて受け継がれる人生の躍動感~
彫刻家クロスは,しばらく創作活動をしていなかったが,妻が町で見出してきた少女メルセの肉体美に創作意欲を掻き立てられる。彼女は,カタルーニャがフランコ軍の支配下に置かれたとき,レウスの近くからフランスへ逃れてきたもので,野性味を帯びている。ふたりのいる山小屋のアトリエにも戦争の影が及ぶ中,クロスは,人間の愚かさを嘆き,戦争が直に終わることを願いながらも,ひたすら“自分なりの着想”を模索し続けていた。
監督は,フランスの彫刻家アリスティド・マイヨール(1861~1944)に着想を得たという。彼は,1934年に出会ったディナ・ヴィエルニ(1919~2009)に触発され,多くの作品を生み出す。一方,彼女は,モデルを務め,1995年にパリでマイヨール美術館をオープンする。本作では,老境の彫刻家のモデルに注ぐ眼差しが豊かな光彩を放っており,ふたりの人生が交差した時間の輝きがモノクロ特有の穏やかな光沢で包み込むように捉えられる。
メルセは,彫刻など芸術には縁がなかったが,レンブラントが家族の情景を描いたデッサンに関するクロスの話に引き込まれる。彼女の目に見える世界が飛躍的に広がっていく様子が手に取るように伝わるシーンだ。その素描は,日常の中で人々の躍動感のある動きの一瞬を巧みに捉え,人生の一コマを物語っていた。目を輝かせるメルセの表情を見ていると,様々な人生が愛おしく,世の中も捨てたものではないとの思いが湧き上がってくる。
レジスタンスのピエールを匿ったり,ドイツ軍人のヴェルナーの訪問を受けたりしながらも,ふたりの生活は続く。眠りに落ちた老人の体に少女の影が重なった後,少女の顔に後光が差すようなカットが続く。メルセはクロスの顔を両手で優しく包み,クロスは涙ぐむ。幸せの時間が流れ,やがて彫刻は完成して別れの時が来る。終幕では,メルセの中でクロスが生き続けていくという歓びが感じられ,時代を超えた人生の連なりが見えてくる。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://www.alcine-terran.com/Atorie/
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