『あの頃、君を追いかけた』
原題 | 那些年,我們一起追的女孩(You Are the Apple of My Eye ) |
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制作年・国 | 2011年 台湾 |
上映時間 | 1時間50分 |
監督 | ギデンズ・コー |
出演 | クー・チェンドン、ミシェル・チェン、スティーヴン・ハオ |
公開日、上映劇場 | 2013年9月21日(土)~梅田ガーデンシネマ、9月28日(土)~神戸アートビレッジセンター、京都みなみ会館 |
~涙は、青春の最高の宝物~
高校生男子たちが、たわいない悪戯を繰り返しながらも、大好きな女の子を追いかけ続けた日々を10年にわたって描く。ささいな喧嘩やすれちがいで、本当の気持ちを言えない切なさが全編をおおう。
1984年、台湾中西部の中高一貫の高校。コートンはじめ悪ガキ5人組は、こぞって優等生で美人のチアイーに心寄せている。ある事件がきっかけで、コートンはチアイーに勉強をみてもらうことになる。「対数なんて人生で使わない」と勉強を馬鹿にするコートンに、チアイーは「無駄な努力も人生のうち」と諭す。コートンの幼稚さに呆れながらも、その男気に惹かれ、いつしか二人は想いあう仲に。卒業、大学進学と、好きだと伝えきれないまま社会人となり…。
台湾、香港で大ヒット。人気作家が自伝的な小説を自ら監督。「SLAM DUNK」、「ドラゴンボール」など日本文化の影響もうかがえる。男子高校生ならではの下ネタも、青春の思い出の一コマとして、スパイスとなり笑いを誘う。自分に正直で、思い込んだら一直線、ユーモアもあるコートンのキャラが魅力的。幼稚にみえても、懸命さが伝われば、思いは相手に届くはず。チアイーにTシャツをプレゼントする時「俺の手描きで、ちょっとへぼいけどまあまあだ」とかっこつけるところが可愛い。コートンのモノローグが入ることで、彼の揺れる内面が伝わり、映画に深みが出た。
日本語タイトルが過去形という意味が、ラストでじんわり迫ってくる。何年来、あんなにも心こがれ、今も好きでたまらない人の幸せを、たとえ一緒に歩めなくなったとしても、心から祝福したいといえる気持ちに変わるすばらしさ。この瞬間、コートンは大人の男になったといえる。英題の意味はかけがえ のない人。人を愛すること、たとえ、その恋が報われなくても、恋することのきらめき、切なさは、流した涙とともに、宝物になるはず。
32歳の監督が、映画の最後で17歳の自分に感謝の言葉を贈る。本作を観て、きっと誰もが自分の恋した記憶を思い出して、胸熱くなるにちがいない。「僕の世界のすべては君のかけらでできてる」というエンドロールの歌詞が切なくてたまらない。
(伊藤久美子)
公式サイト⇒ http://u-picc.com/anokoro/
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