『リヴ&イングマール ある愛の風景』
原題 | Liv & Ingmar |
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制作年・国 | 2012年 ノルウェー,スウェーデン,UK,チェコ,インド |
上映時間 | 1時間24分 |
監督 | ディーラージ・アコルカール |
出演 | リヴ・ウルマン,イングマール・ベルイマン |
公開日、上映劇場 | 2013年12月7日(土)~ユーロスペース、12月14日(土)~梅田ガーデンシネマ、シネ・ヌーヴォにて公開 |
~名女優と巨匠の50年にわたる友情の物語~
伝説の名女優リヴ・ウルマン(1938.12~)が巨匠と呼ばれた監督イングマール・ベルイマン(1918.7~2007.7)との思い出を語る。恋,孤独,怒り,痛み,渇望,友情の6項目に分け,2人の親交が丁寧に綴られていく。リヴの語りに即してベルイマン作品のシーンが示され,その人生の的確な描写に舌を巻く。リヴは25歳のときイングマールと出会い,気付くと恋をしていた。一方,彼はリヴを追ってノルウェーまで行き,離れたくないと言った。
2人はいずれも離婚し,スウェーデンのフォール島で同居を始め,娘リンをもうける。だが,夢のような2人だけの世界は長く続かず,リヴにはイングマールが近くにいるのに遠い人になっていく。2人は互いに怒りを覚え,それを映画で発散させる。映画のシーンの裏話を聞くような面白さと同時に,リヴの人間としての大きさを実感する。彼女は,苛立っている彼の姿を見ると,この人も弱い人間だと心が安らぎ,寛容になれたと述懐する。
リヴは,イングマールの欠点や弱さが見えると共に,理解や尊敬も深める。賢い人だけど,自惚れ屋のエゴイスト。これが愛だと思うと同時に,別れが近いことも感じていた。「ある結婚の風景」でのヨハンとマリアンの別れの予感が映される。孤独が詰まった鞄を抱え,悲痛な苦しみを背負うが,一緒に仕事をした仲間たちに救われる。「人形の家」のラストは不安を抱えて新しい世界に踏み出すシーンだと語るリヴ。過去を忘れて先に進む。
イングマールと別れても友情は続いた。リヴの舞台を観るためだけに,長旅の嫌いなイングマールがニューヨークまでやって来たという。時々守ってくれる人が欲しくなるというリヴの望みはかなう。彼の最期を感じたリヴは,初めて飛行機をチャーターして駆け付けた。今でも時々彼が広い宇宙のどこかから戻ってきてくれるそうだ。彼がペンでなぞっていたハートマーク,そして熊のぬいぐるみの中にあったリヴの手紙が,胸にじんとくる。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://livingmar.com/
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