『ルノワール 陽だまりの裸婦』
原題 | Renoir |
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制作年・国 | 2012年 フランス |
上映時間 | 1時間51分 |
監督 | 監督・脚本:ジル・ブルドス 撮影:マーク・リー・ピンビン |
出演 | ミシェル・ブーケ,クリスタ・テレ,ヴァンサン・ロティエ,トマ・ドレ,ロマーヌ・ボーランジェ |
公開日、上映劇場 | 2013年10月4日(金)~TOHOシネマズ シャンテ、テアトル梅田、京都シネマ、シネ・リーブル神戸 他全国ロードショー |
~2人のルノワールに共通のミューズが…~
2人のルノワールの芸術に大きな影響を与えた1人の女性がいた。監督は,卓越した視点と感性で,1915年の南仏を背景として,彼らが共に過ごした時間を切り取っていく。アンドレ・マシュラン(1900~1979)は,父ピエール=オーギュスト(1841~1919)の最後のモデルで,二男ジャン(1894~1979)の最初の妻で女優でもあった。父は彼女のお陰で画家として生き返り,息子は妻をスターにするという望みだけで映画界に足を踏み入れた。
オーギュストは,リウマチのため車椅子で生活しており,妻を亡くしたばかりだった。そこにアンドレがやって来る。そのビロードのような肌に創作意欲が掻き立てられる。だが,戦争の影はフランス南東部のカーニュ・シュル・メールにも及んでいた。彼は暗い色はいらない,愉快な色で描かねばならないと言う。人生に不快なことを増やす必要はないというのだ。確かに,彼の絵を前にすると,描線の美しさより色彩の豊かさに圧倒される。
映像は,日差しを浴びてきらめく木々や柔らかい質感の肌を,まるで彼の絵のように映し出す。ピクニックに出掛けた泉のシーンでは,水辺で戯れる女性たちが生き生きとして美しい。監督は,オーギュストが絵を描く姿を何度も映している。その巧みな筆遣いをすぐ近くで感じることができる。しかも,彼が描いている絵と彼が見ているモデルとは,かなり違って見える。画家の主観を通してモデルが変容する様子が捉えられた映画は珍しい。
一方,ジャンが足に銃創を負って療養のため帰ってくる。そしてアンドレと出会う。彼は,まだ将来の夢を持っていなかった。アンドレとの出会いがなければ,映画監督にならなかったかも知れない。何と,彼女はフランスの映画史を大きく変えたのだ。もっとも,それはまだ先のことで,ジャンは戦友を見捨てられないと言って前線へ戻っていく。画家ルノワールの晩年だけでなく,映画監督ルノワールの誕生秘話も描かれており,興味深い。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://renoir-movie.net/
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