『眠れる美女』
原題 | Bella addormentata |
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制作年・国 | 2012年 イタリア・フランス |
上映時間 | 1時間55分 |
監督 | 監督・脚本:マルコ・ベロッキオ |
出演 | トニ・セルヴィッロ,イザベル・ユペール,マヤ・サンサ,アルバ・ロルヴァケル,ピエール・ジョルジョ・ベロッキオ,ミケーレ・リオンディーノ,ファブリツィオ・ファルコ |
公開日、上映劇場 | 2013年10月19日(土)~東京/シアター・イメージフォーラム、大阪/梅田ガーデンシネマ、10月26日(土)~京都/京都シネマ、11月~神戸/元町映画館 他全国公開 |
~眠る女性を通して問う,人が生きる意味~
2008年11月,イタリアで17年間植物状態だった女性エルアナ・エングラロに対する延命措置の停止を認める裁判が確定した。2009年2月3日,彼女はこれを実施してくれる施設のあるウディネに移送される。一方,バチカンの意向に配慮したイタリア政府は治療を続けさせるための法案の可決を目指していた。このような状況下で,2,3日の間に起きた3つのエピソードを提示することを通じて,生きることの意味を問う映画が生み出された。
上院議員ロベルトは,エルアナの父と似た悲劇の体験から,法案への反対票を投じて辞職する決意を固める。信仰心の厚くない彼は死期の迫った妻に1日も長く生きて欲しいと願うが,信仰心の厚かった妻は苦痛を止めて欲しいと頼む。娘のマリアは,尊厳死に賛成する父を受け入れられず,反対の意思表明のためウディネに赴く。だが,そこで1人の青年を愛したことで,父の心情が見えてくる。2日振りに対面した2人の表情が輝いていた。
元女優の名前が示されないのは,彼女が自分を見失っているからだろうか。彼女は,植物状態となった娘ローザの回復を切望し,人生の全てを賭けている。神を信じ切れないと嘆く。娘に付き添いながら眠りに落ちたときの寝言が痛々しい。いくら手を洗っても汚れが落ちない,という。息子フェデリコは,母の人生をつぶすな,母を解放しろとローザに迫る。娘を思う母,母を思う息子,そして居場所を失った父。誰もが悲しみを抱えている。
薬物依存のロッサは,手首を切ったり窓から飛び降りようとしたり,自殺を試みる。彼女の命を救う医師パッリドは,なぜ生きることを強制するのかと問われ,私にも止める自由があると答える。生きていても無駄だという彼女の頬を平手打ちする。ビシッという音が響く。痛みを感じるから生きているというよりも,生きているから痛みを感じるのだ。生きることには痛みを伴う。2人の間に信頼が生まれた瞬間を映したエンディングがいい。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://nemureru-bellocchio.com/
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