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『エリジウム』

 
       

Elysium-550.jpg『エリジウム』

       
作品データ
原題 Elysium
制作年・国 2013年 アメリカ
上映時間 1時間49分
監督 監督・脚本:ニール・ブロンカンプ
出演 マット・デイモン,ジョディ・フォスター,シャールト・コプリー,アリス・ブラガ,ディエゴ・ルナ,ワグネル・モウラ,ウィリアム・フィクトナー
公開日、上映劇場 2013年9月20日(金)~大阪ステーションシティシネマ、梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、TOHOシネマズなんば、MOVIX京都、神戸国際松竹 他全国ロードショー

 

~いつの日かきっと理不尽な格差のない社会を~

  

 

Elysium-4.jpg 監督は,前作「第9地区」では南アフリカのアパルトヘイトを,本作ではアメリカの格差社会を,いずれもSFアクションとして描き上げた。富裕層に優しく貧困層に厳しいアメリカの医療制度のように,天上界では不治の病がなくなり損傷した体も復元するが,地上の人々は満足な治療を受けられない。本作は,このように人類が天上と地上の二層に隔絶されて生活する2154年の社会を舞台としながら,この2つの世界の融合を希求している。

Elysium-2.jpg デラコートは,天上の世界”エリジウム”を防衛するためなら手段を選ばず,地上からの不法移民を容赦なく阻止し排除するのはもちろん,クーデターさえ敢行しようとする。一方,マックスは,地上の工場で働いていたが,理不尽ともいうべき事故で放射線を浴び余命5日と診断され,生き長らえるためにエリジウムへ侵入しようとする。だが,彼は,デラコートの計画に巻き込まれ,自ら意識しないまま特別な存在として生きることになる。

Elysium-3.jpg 冒頭で描かれる2つの世界の対比が印象的で,本作の主調となっている。天空に浮かぶ理想郷は,宝飾品のような形状で,イミテーションのように見える。これに対し,エリジウムから見る地球は,汚れているとはいえ,青く美しい。社会が荒廃しても,人間の心まで荒んでいくわけではない。マックスは,人類にとって掛け替えのない美しい心の持ち主だった。邪心のない清らかさが国境をなくし歴史を変えるのだという主張が聞こえてくる。

 孤児院で育ったマックスは,そこでの幼なじみフレイに必ずエリジウムに連れて行くと約束していた。2人で過ごした幼い頃の情景が,マックスの脳裡に浮かぶ記憶として,何度も映し出される。そんな彼だからこそ,フレイの娘マチルダの,果物を食べることができたミーアキャットの話に影響を受けたに違いないと,納得させられる。凄惨な描写や悲痛な結末を超え,爽やかな印象を残して映画は終わる。人類は決して捨てたものではない。

(河田 充規)

 公式サイト⇒  http://www.elysium-movie.jp/