『31年目の夫婦げんか』
原題 | HOPE SPRINGS |
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制作年・国 | 2012年 アメリカ |
上映時間 | 1時間40分 |
監督 | デヴィッド・フランケル |
出演 | メリル・ストリープ、トミー・リー・ジョーンズ、スティーヴ・カレル |
公開日、上映劇場 | 2013年7月26日(金)~ TOHOシネマズ シャンテ、新宿シネマカリテ、TOHOシネマズ(梅田、なんば、二条、西宮OS)、シネ・リーブル神戸 他全国順次ロードショー |
~決して他人事ではない! 夫婦だからこその不満と慈しみ~
メリル・ストリープとトミー・リー・ジョーンズという1970年代後半からアメリカ映画界を支えてきた名優による熟年夫婦のお話。あまり口に出しては言えない夫婦の問題。それを、結婚31年目にして初めて本音でぶつかり合う夫婦の危機を、微妙な緊迫感とユーモアでもって、名優二人による丁々発止の迫力ある芝居で見せている。「夫婦げんかは犬も食わない」と言われるように、他人にしてみればどうでもいい事なのだが、この二人が演じるとスクリーンに惹き付けられる。特に、既婚者にとっては共感する部分も多く、自分自身の結婚生活を客観的に見ているようでとても興味深い。
二人の子供もそれぞれ結婚して、夫婦ふたりの生活。毎朝、決まった時間に決まった朝食を摂って出勤し、定時に帰宅して二人で夕食。そして、毎晩夫は同じゴルフ番組を見て、別々の寝室で寝て、触れ合うこともない。そんな退屈な夫婦生活を改善しようと、妻のケイ(メリル・ストリープ)は夫婦問題の集中カウンセリングを受けることにする。最初は嫌がっていた夫アーノルド(トミー・リー・ジョーンズ)も、渋々同行することに。
フェルド医師(スティーヴ・カレル)を前に、夫婦の馴れ初めから現状に至るまで、夫婦が事実を共有し、それぞれの気持ちを吐露させる。さらに、二人に対し宿題を出し、その反応を見ていく。単純なことのようで、夫婦が抱える問題に直面する厳しい試練を課していく。無骨で皮肉屋のアーノルドは最初悪態ばかりついていたが、ケイの真剣さに、彼なりの努力を見せ始める……。
「もう一度あなたと結婚したい」なんて、31年の結婚生活を経て言えることだろうか?しかも、4,000ドルも払ってカウンセリングを受けるなんて、そんな勿体ないことをするだろうか?さっさと離婚するか、それとも、夫への期待を諦めて自分なりの生きる楽しみを見つけるだろう。妻にそんなことを言われる夫は幸せだ。どんなにいがみ合っていても、あるいは冷めた関係であっても、その夫婦にしか分からない思いを重ねた歴史がある。悪い時ばかりではなかったはず、いい時もあったはず。簡単に結論を出さず、この夫婦のように改善のための努力をしてみるべきだろう。まだまだ平均寿命までの道のりは長い。どうせなら、少々のことで声を荒げることなく、穏やかに楽しく暮らしたいものだ。あれ?いつの間にか、結婚26年目の筆者個人の願いになってしまった!?
結婚35年目のメリル・ストリープは4人の子供の母親。女優としてのキャリアは超一流、美人で聡明で社会活動も積極的、彼女ほど優等生の女優は珍しいくらいだ。本作の主人公ケイに通じるものがある。一方、トミー・リー・ジョーンズは、高校卒業後油田で働き、独学でハーバード大学へ進学。さらにブロードウェイで皿洗いをしながら役者をめざすという苦労人。個性的な顔のため中々芽が出なかったが、オリバー・ストーン監督と生年月日が同じこともあってか、彼の監督作で活躍するようになる。今では、ご存じ宇宙人ジョーンズとして、日本のいろんな職業に扮して、地球人を調査中。本作のアーノルドとは違って、波瀾万丈の役者人生といっていいだろう。トミーが監督する作品の主役がメリルというから、本作でよほど気が合ったのだろう。そんな二人の演技合戦を、どうぞお楽しみください。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://31years.gaga.ne.jp/
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