『オーガストウォーズ』
原題 | Avgust. Vosmogo |
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制作年・国 | 2012年 ロシア |
上映時間 | 2時間12分 |
監督 | 監督・脚本:ジャニック・ファイジエフ |
出演 | スベトラーナ・イヴァーノヴナ,エゴール・ベロエフ,マクシム・マトヴェーエフ |
公開日、上映劇場 | 2013年8月10日(土)~有楽町スバル座、渋谷TOEI、梅田ブルク7、シネマート心斎橋 他全国ロードショー |
~戦場にファンタジーが重なり母親が走る~
黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス地方にグルジアがある。その国内でロシアと国境を接する南オセチアはグルジアからの独立を求めていた。2008年8月,ザウールはロシア平和維持軍として南オセチアで任務に就いていた。彼の元妻クセーニヤは息子チョーマをザウールの下へ送り出す。だが,その後すぐグルジアが南オセチアと軍事衝突し,その翌日にはロシア軍が介入した。母親はグルジア紛争の渦中に置かれた息子の救出へと向かう。
チョーマは,ロボットが大好きで空想力の豊かな少年だ。母親の新しい恋人には馴染めず,仲間のロボットに親しみを覚えている。冒頭で描かれるファンタジックな空想世界はチョーマを取り巻く現実世界と繋がりを保っていた。戦場のシーンでは,戦車に擬態したロボットが登場し,現実のグルジア軍に架空の戦闘ロボットが交錯する。チョーマの脳裡で想像の世界が現実に融合していく。きっとクセーニヤにもその様子が見えていたはずだ。
彼女は,母親に「行って連れ戻しなさい」と背中を押されて戦地に向かう。彼女の乗ったバスが被弾し,ミサイルが飛び交う中で脱出劇が展開する。迫真性に富むシーンが続く中で,彼女は,色んな人たちに助けられ,戦場で生き延びる術を学んでいく。戦場から電話で心臓の悪い母親と話す兵士リョーハは,クセーニヤが息子と再会できるよう願わずにいられなかった。スクリーン上に母親の息子に対する一途な思いがどんどん広がっていく。
クセーニヤは,「ロボットが助けに向かっている」と息子を励まし,「アザニジマザ,アマラヴァーチ…」と呪文を唱え,“世界で最も危険な道”を疾走する。子犬を守る母犬とも心を通わせ,グルジア軍兵士の心をも動かす。倒れた母犬の姿が悲しみを映し,兵士の腕の赤十字が希望を感じさせる。ディテールに至るまで行き届いた描写があり得ない状況にリアリティを与える。これは「教え育ててくれた女性たち」に捧げられた作品である。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://www.augustwars.com/
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