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『偽りの人生』

 
       

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『偽りの人生』

       
作品データ
原題 Todos tenemos un plan 
制作年・国 2012年 アルゼンチン、スペイン、ドイツ 
上映時間 1時間57分 
監督 アナ・ピターバーグ
出演 ヴィゴ・モーテンセン、ソレダ・ビジャミル、ダニエル・ファネゴ、ハビエル・ゴディーノ、ソフィア・ガラ・カスティリオーネ
公開日、上映劇場 2013年7月12日(金)~TOHOシネマズシャンテ、大阪ステーションシティシネマ ほか全国ロードショー

 

~ヴィゴ・モーテンセンが凄い!…偽っても逃れられない宿命~

 

 「このままの人生でいいのか?」と、自分の人生に疑問を感じたことはないだろうか。もし、別人の人生に乗り換えられるとしたらどうするだろう? 映画『偽りの人生』は、決まりきった生活に辟易していた男が、突然訪れたチャンスを利用し別人に成りすます物語。主演は、『ロード・オブ・ザ・リング』以降世界的大スターの仲間入りを果たしたヴィゴ・モーテンセン。近年、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』『イースタン・プロミス』『善き人』など様々なハードな人物像を強く印象付けている。監督は、本作が監督デビューとなるアナ・ピターバーグ。アカデミー賞外国映画賞に輝いた『瞳の奥の秘密』(2009)のキャストやスタッフが脇を固めたサスペンスである。

ituwarino-2.jpg 舞台となっているのは、アルゼンチン・ブエノスアイレスから北へ30㎞ほどの所にあるティグレというデルタ地帯。移動手段はボートしかなく、幾筋もの川の往来が人々の生活を支えていた。ブエノスアイレスで医師として働くアグスティン(ヴィゴ・モーテンセン)は、人気作家の美人妻クラウディア(ソレダ・ビジャミル)が所有する高級マンションで暮らしていたが、結婚8年目で子供に恵まれず養子をとる準備をしていた。ところが、アグスティンは聡明な妻に合せた生活に空しさを感じ、養子問題をキッカケに突然部屋に引きこもってしまう。

ituwarino-3.jpg そこに、長年音信不通だった双子の兄ペドロ(ヴィゴ・モーテンセン二役)が訪ねて来て、重篤な病に侵されているので苦しむ前にアグスティンに殺して欲しいと頼む。そこで、ペドロに成りすまし、故郷でもあるティグレのペドロの家へ行く。ところが、ペドロはとんでもない犯罪を犯していて、周辺の複雑な人間関係や子供の頃の記憶がアグスティンを追い詰める。
 

ituwarino-5.jpg ブエノスアイレスでのクラウディアとの生活はよほど窮屈だったのだろうか、医師として有意義な毎日を送っていたはずなのに、人は時として傍からは理解できないような行動をとる。孤独な中で空しさを感じていたのだろうか……ティグレの独特な自然環境は、ひと時の平安をアグスティンにもたらしていたようだ。時折映されるボートを走らせながら見上げた空や森の木々の風景が、彼の心が解放されていく様子を語っていたようだ。

 今回双子の役に臨んだヴィゴ・モーテンセンは、子供の頃に住んでいたアルゼンチンを“第二の故郷”というだけあって、全編スペイン語でも違和感なく、粗野で大胆なペドロと繊細で鬱屈した心情を抱えるアグスティンを見事に演じ分けていた。さらに、ペドロに成りすますアグスティンの虚偽の人物像は複雑そのもの。偽りの人生から得られるものは、虚しさだけなのだろうか? それを佇まいだけで語るようなヴィゴ・モーテンセンの凄みは尋常ではない!

(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://www.itsuwari-jinsei.com/

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