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『タリウム少女の毒殺日記』

 
       

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『タリウム少女の毒殺日記』

       
作品データ
制作年・国 2012年 日本
上映時間 1時間22分
監督 監督・脚本・編集:土屋豊(『新しい神様』、『PEEP”TV”SHOW』)
出演 倉持由香、渡辺真起子、古館寛治、Takahashi
公開日、上映劇場 2013年7月6日(土)~渋谷アップリンク、8月3日(土)~シネマート心斎橋 アップリンク配給

 

~無機質な”観察少女”が犯した罪~
 

tarium-2.jpg  次世代の映画は、こんな“人間分析”が主になるのかも知れない。そう予感させるのが土屋豊監督(47)の『タリウム少女の毒殺日記』。2005年に起きたタリウムによる母親毒殺未遂事件。犯人は17歳の娘だったことから騒然たる話題を巻き起こした。このスキャンダラスな事件をモチーフに、架空のタリウム少女を主人公にした不思議な映画が登場した。ロッテルダム映画祭などに出品されてバッシングを含む騒然たる話題を巻き起こしたのも当然か。 映画はドラマ性を極力廃したフェイクドキュメンタリーであり、生物学者や整形外科医らのインタビュー(つまりドキュメンタリー)も随所に挿入され、早い話、何でもありで、この事件に迫っていくスラッシュムービー、「これは果たして映画か」という究極の疑問に行き着くかもしれない。

tarium-3.jpg  もとはタリウム少女のブログ。そこには生物を観察するように“母親観察”記録が克明に記されていた。『選挙』相田和弘監督の“観察映画”ではないが、ヒロインは「観察するぞ観察するぞ」と宣言し、かえるの解剖から鳥のくちばし、アリ、ハムスターなど小動物の生態のアップで彼女の心象風景を暗示していく。彼女は学校で執拗ないじめにも遭っている。このあたり、酒鬼薔薇事件の少年Aをほうふつさせるが、いじめの報復行為か、と示唆しつつ、映画はどんどん変わった方向へ飛翔していく。  一方、母親(渡辺真起子)がアンチエイジングに熱心でその様子も紹介。少女の「(タリウム)経口投与」も始まり、それによる変化の様子も克明に記録していく…。

tarium-4.jpg  なんと不気味な、と絶句する展開。だが、少女には母親への憎悪もなく、あくまで観察の対象というところがうすら寒い。 過去多くの映画がチャレンジしてきたが、思春期の少女の不可解な心理など理解しようはない、というのが本音だろう。 少年なら若松孝二監督『17歳の風景』は同じ17歳の少年が母親を金属バットで殴り殺して自転車でひたすら東へ逃走する、といった極めてシンプルな犯罪だったのと比べて、何と面妖な…。女は少女のころからかくも複雑怪奇という証明でもあろうか。

tarium-di.jpg  事件を通して人間の本質、生と死の境界線にまで迫った意欲作。土屋監督は「システム、人間、プログラム、生命」という4つの視点をつなぎ直してみる必要がある、という。 東京国際映画祭でこの映画を見た同世代少女は「自分が映画の中の少女にどんどん共感していった。複雑な心境」と監督に感想を寄せ、監督は自作ながら驚いたという。 土屋監督はインディペンデント・メディアを使って変革を試みる“メディア・アクティビズム”を提唱。99年長編ドキュメンタリー『新しい神様』が山形ドキュメンタリー映画祭で国際批評家連盟賞を受賞し、以後、1作ごとに各国映画祭で注目を集める“新時代作家”。近年、若い監督の作品がほとんど仲間内の出来事にとどまる“合コン映画”に堕してしまっているのを見ても、土屋監督の新作『タリウム少女毒殺日記』が破天荒な幅広さ奥深さを持っているのは間違いない。

  タリウム少女に扮するのは現役女子大生のグラビアアイドル倉持由香(22)。インターネット世代に絶大な人気を誇る彼女の透明な存在感が、土屋監督の世界を体現しているように思える。

(安永 五郎)

第25回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門 作品賞 受賞

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