『ペーパーボーイ 真夏の引力』
原題 | The Paperboy |
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制作年・国 | 2012年 アメリカ |
上映時間 | 1時間47分 |
監督 | リー・ダニエルズ |
出演 | ザック・エフロン、ニコール・キッドマン、マシュー・マコノヒー、ジョン・キューザック、メイシー・グレイ他 |
公開日、上映劇場 | 2013年7月27日(土)~ヒューマントラストシネマ有楽町、テアトル梅田、MOVIX京都、8月17日(土)~シネ・リーブル神戸 にて全国順次公開 |
~実力派演技陣によるクライム・サスペンス~
1969年の夏、フロリダの田舎町に住むジャックは、ハンサムなのに奥手な性格、でも、気持ちのこまやかな青年だ。幼い頃に家を出てしまった母親の影が、彼の心には密かに棲みついていて、しょっちゅう変わる父親の恋人にうんざりしながら、家業の新聞社の仕事を手伝っていた。そんな折、大手新聞社に勤める兄ウォードが黒人記者を連れて帰省した。4年前に起きた保安官殺人事件で逮捕され、死刑囚となっているヒラリーという男がいるのだが、ウォードは、それが冤罪なのではないかと再調査を始めることになったのだ。しかし、それはジャックにとってもウォードにとっても、危険な事態を呼び起こす幕開けだった…。
ゆらゆらと立ち上がる陽炎のような夏が映像に刻みつけられ、予想がつかない展開に、観ているほうもじっとりと汗ばんでくるよう。この物語の中核となるのが、獄中の死刑囚ヒラリーと手紙だけで意思疎通を図り、彼の婚約者となったシャーロットという名の風変りな女性だ。彼女とヒラリーが初めて顔を合わせるシーンの、何ともエロティックで動物的なこと!だが、奥手のジャックは彼女に横恋慕し、終始、視線で追いかけてゆく。青年期の抑え込まれた性的欲望の噴出に加え、満たされぬ母親への想いが重なっているから何とも厄介で哀れだ。おまけに、兄の“秘密”まで知らされたジャックにとって、このひと夏は、未知の世界を知る大人への階段そのもの、けして後戻りはできない人生の曲がり角だとも言えるだろう。
汚れ役のニコール・キッドマン、そして、だんだん不気味さをにじませてくるジョン・キューザックの怪演には目を見張った。壮絶な家庭で悩み苦しむ黒人少女の希望の形を描いた前作『プレシャス』から一転、全く作風の異なる本作を世に送り出したのは、リー・ダニエルズ監督。黒人差別のひどかった時代と地域を反映させた描写を随所に織り込みつつ、今回も緻密な人物表現の手腕を発揮したと思う。伝説の歌姫、私も大好きなジャニス・ジョプリンの伝記映画を準備中と聞くから、ますます今後が楽しみな監督の一人である。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://www.paperboy-movie.jp/
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