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『コン・ティキ』

 
       

kontiki-550.jpg『コン・ティキ』

       
作品データ
原題 Kon-tiki 
制作年・国 2012年 イギリス・ノルウェー・デンマーク・ドイツ合作
上映時間 1時間53分
監督 ヨアヒム・ローニング、エスペン・サンドベリ
出演 ポール・スヴェーレ・ヴァルハイム・ハーゲン、アンダース・バースモー・クリスチャンセン、ヤコブ・オフテブロ、トバイアス・サンテルマン、オッド・マグナス・ウィリアムソン、グスタフ・スカルスガルド、アグネス・キッテルセン
公開日、上映劇場 2013年6月29日(土)~ヒューマントラストシネマ有楽町、梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、T・ジョイ京都、OSシネマズミント神戸 他全国ロードショー

 

~66年前、筏で太平洋横断に成功!世界史を塗り替えたコンティキ号の大冒険~

 

kontiki-3.jpg 子供の頃読んだ冒険記の中で、筏で太平洋を渡った話があった。深い深い底の知れない海が苦手な私は登山記の方が好きだったが、その物語だけは覚えていた。そう、ムー大陸伝説に関連させて読んだのが「コン・ティキ号の探検記」だったのだ。今年のアカデミー賞は、4部門を制した『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』のように太平洋を横断するという映画がもう1本ノミネートされていた。それはノルウェー映画『コン・ティキ』。1947年、ノルウェーの学者トール・ヘイエルダールが、1500年前のインカ時代と同じ材料で作った筏で、南米ペルーから南太平洋のポリネシアへの8000㌔に及ぶ大航海を成功させたという実話の映画化である。

kontiki-5.jpg この歴史的快挙は、ヘイエルダール著「コン・ティキ号の探検記」や、1951年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した記録映画で世界中に広まった。ドラマ化は本作が初めてだという。ノルウェーが誇る偉大な冒険家ヘイエルダールは、2002年に87歳でイタリアで亡くなったが、生前からこの企画を進めていたイギリスのプロデューサー、ジェレミー・トーマス(『ラスト・エンペラー』『戦場のメリークリスマス』)が、16年の歳月をかけて完成させた渾身作である。

 ヘイエルダール(ポール・スヴェーレ・ヴァルハイム・ハーゲン)は、ポリネシアの島々で新妻と動植物の研究をしていたが、南米と同じパイナップル科が生息していることや、「ポリネシア人の祖先は、太陽神ティキが海の東から連れて来た」という伝説に基づいて、「ポリネシア人の祖先は南米から海を渡ってやって来た」という説を唱える。それを世界に認めさせるため、無謀とも言える1500年前と同じラワン材の丸太を麻の縄で縛っただけの筏で太平洋を渡るという大冒険に挑戦する。

kontiki-4.jpg ヘイエルダールを船長とするコン・ティキ号は、幼なじみのエリックを航海士に、通信技師やエンジニアなど総勢6名のクルーたちを乗せて、ペルーのカヤオ港を出発し、南赤道海流に乗って一路ポリネシアを目指す予定だった。だが、嵐に遭って進路が反れたり、大きなジンベエザメに出会ったり、ホオジロザメに囲まれたり、星と風まかせの航海の日々は困難を極めた。無線機の故障や、いつ筏が壊れるかもしれないという不安と恐怖に苛まれながら、ひたすら西を目指す。

kontiki-2.jpg 最後の最後までハラハラドキドキの試練続き。実話だけに海の恐怖が実感として伝わってくる。ヘイエルダールはその後、ガラパゴス島やイースター島を探検したり、古代エジプト人と同じ葦舟を複製したラー号で大西洋を横断したり、古代シュメール人の葦舟でイラクからアフリカのジブチへ航海したり、様々な大冒険を成功させている。古代より人類の移動手段として海路が使われてきたことを身を持って実証してきた偉大な冒険家なのだ。その出発点となったコン・ティキ号の大冒険は、我々を本物の大冒険の旅に連れてってくれる。最後まで自らの信念を貫き、忍耐強く挑み続けた強い精神力に、改めて驚かされる。是非親子で見て頂きたい映画です。

(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://www.kontiki.jp/

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