原題 | STANLEY KA DABBA |
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制作年・国 | 2011年 インド |
上映時間 | 1時間36分 |
監督 | アモール・グプテ |
出演 | パルソー、アモール・グプテ他 |
公開日、上映劇場 | 2013年6月29日(土)~シネスイッチ銀座、梅田ガーデンシネマ、7月6日(土)~京都シネマ、今夏神戸アートビレッジセンター他全国順次公開 |
~お弁当が教えてくれた等身大のインドと、子どもたちのとっておきの笑顔~
食べ物をシェアすることがこんなに周りをHappyな気持ちにさせるなんて!ミュージカルシーンやスター俳優は皆無で、上映時間がたった1時間半の小さなインド映画が、シビアな状況下におかれても誇り高く生きる少年の逞しさを見事に映し出した。主人公スタンリーを助けようとする友達の奮闘ぶりや、キラキラ輝く子どもたちの笑顔、そしてお弁当箱に詰まった美味しい料理を観ていると、思わず微笑んでしまう。今まで日本で公開されてきたインド映画とは一線を画した、新しいインド映画の風を感じる作品だ。
学校にお弁当を持っていくことができない事情を抱えた少年スタンリー(パルソー)。お昼休みになると「家に食べに帰る」といなくなるスタンリーを心配し、クラスメイトは自分のお弁当をスタンリーに分けてあげていた。しかし、毎日同僚のお弁当をもらい、生徒の美味しそうな弁当をなんとかして口にしたいと熱望する国語教師(モール・グプテ)は、スタンリーのせいで自分の食べる分がなくなってしまったことに激怒。「弁当を持参しない生徒は学校にくるべきではない!」と、スタンリーを学校から追いだしてしまう。
歌や踊りがうまく、作り話で周りを楽しませる人気者のスタンリー。子ども同士で生活レベルの差が歴然としている様子も描写されるが、彼らの間に階級制のような上下関係は全くない。むしろ、困っている仲間をなんとか助けようと団結する少年ギャング団のような闊達さがある。授業中に隣席の友人と「陣地」を巡って押し合いへしあいになる様子など、小学校のめまぐるしい日常は思わず笑ってしまえる場面がいっぱいだ。子どもたちとのワークショップから作られた作品ならではの、従来のインド映画にはないライブ感が、非常に新鮮に映る。
本作では、インドで長きに渡って問題となっている児童労働についても描かれているが、それを決して前面に出さず、自然に考えさせる構成になっている点も注目したい。最後にスタンリーは立派な4段弁当を持参し、今までお弁当を分けてもらった友達や先生に、「おかあさんが作ったお弁当だ」と振る舞う。ただ単に微笑ましいとは思えない切なさを感じる一方、それを超えた自ら周りにごちそうする喜びが滲む。あんな小さいお弁当箱から、家庭が、そして世界が見えるとは!貧困という社会問題を笑顔と喜びを交えて表現したインド映画は、毎日子どもにお弁当を作っている私にも我が事(日頃の手抜きを反省!?)のように、身近に感じられる「お弁当につまった愛情」に改めて気付かせてくれた。
(江口由美)
公式サイト⇒http://stanley-cinema.com/
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