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『最後のマイ・ウェイ』

 
       

saigono-550.jpg『最後のマイ・ウェイ』

       
作品データ
原題 CLOCLO
制作年・国 2012年 フランス 
上映時間 2時間29分
監督 フローラン=エミリオ・シリ
出演 ジェレミー・レニエ、ブノワ・マジメル、モニカ・スカティーニ、マルク・バルべ、ジョゼフィーヌ・ジャピ他 
公開日、上映劇場 2013年7月20日(土)~Bunkamuraル・シネマ、8月3日(土)~梅田ガーデンシネマ、8月10日(土)~京都シネマ、シネ・リーブル神戸 他順次公開

 

~あの名曲を作ったスーパースターの真実に迫る~

 

 『マイ・ウェイ』といえば、誰でも知っているスタンダードなバラード。フランク・シナトラやエルヴィス・プレスリーが歌い、さらにはセックス・ピストルズのシド・ヴィシャスが思いっきりの変調でパンクロック風にカバーし(1986年のアレックス・コックス監督『シド アンド ナンシー』では、シドを演じたゲイリー・オールドマンの狂的な歌いっぷりが見られる)、そしてカラオケでは喉じまんのおじさま達が挑戦したがる曲の一つではなかろうか。そんなに有名な歌だが、誰が作ったのかはほとんど知られていない。クロード・フランソワという名前を聞いて、すぐにピンとくる日本人がどれだけいるだろう。かく言う私ももちろん知らなかった、この映画を観るまでは。

saigono-2.jpg CLOCLO(クロクロ)という愛称でフランス国民に愛されたクロード・フランソワは、フランス人の父とイタリア人の母を持ち、エジプトで生まれ育った。歌手として活躍したのは1960年代から70年代で、1978年に39歳の若さで亡くなっている。その間、『夢みるシャンソン人形』でブレイクしたフランス・ギャルをはじめ、多くの女性と浮名を流した。女性関係のだらしなさや、父親譲りの神経質症(これが彼の命取りになるのだが)など、映画は彼をヒーローのようには描かない。どちらかといえば、鼻につくタイプの自信家ですらある。それでいて、時にひどく落ち込む。バンドマンの一人に、「落ち目になってレストランで歌っても、残ってくれるか?」と尋ねるシーンは印象的だ。生き馬の目をぬくようなショー・ビジネスにあって、強さと弱さを併せ持つ一人の男を描いてみごとだ。

 また、本作は家族の物語でもある。音楽の世界に飛び込もうと決意したクロードに対して、「大道芸の息子はいらん、出てけ!」と突き放す父親。クロードの成功を見ずに亡くなった父親に対して彼は終生エディプス・コンプレックスを抱いていたのではないか。一方で、母親とは相互依存関係にあったようで、この両親との距離感がいつも彼の私生活に何らかの影響を与えていたのではないかと思う。

 劇中に流れる歌声は、本物のクロード・フランソワの声だそうだが、ジェレミー・レニエの顔つきが実によく似ており、またハードなダンスも含め、力演と言っていい。クロード・フランソワが日本で知られていない理由は、アメリカに進出する前に亡くなったからだろう。アメリカを経由してからしか、なかなかヨーロッパのトレンドが日本に入って来ない時代だったから。ともあれ、どこかで耳にした懐かしい曲も盛り沢山で、音楽好きにはより一層楽しめる一作だ。

(宮田彩未

公式サイト⇒ http://www.saigono-myway.jp/index.html

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