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『華麗なるギャッツビー』

 
       

GGB-550.jpg『華麗なるギャッツビー』

       
作品データ
原題 THE GREAT GATSBY
制作年・国 2013年 アメリカ 
上映時間 2時間22分
原作 F・スコット・フィッツジェラルド
監督 バズ・ラーマン
出演 レオナルド・ディカプリオ、トビー・マクガイア、キャリー・マリガン、ジョエル・エドガートン、アイラ・フィッシャー、ジェイソン・クラーク、エリザベス・デビッキ
公開日、上映劇場 2013年6月14日(金)~全国ロードショー

 

~華麗なる幻想を抱きすぎた男の純情~

 

 近年益々文学的評価が高まるF・スコット・フィッツジェラルド原作の『グレイト・ギャッツビー』。作者自身「ジャズ・エイジ」と名付けた狂乱の時代にひとりの女性に人生を捧げた大富豪の悲劇を描いた小説は、1925年発行当初の人気はひまひとつだったらしい。だが、1974年ロバート・レッドフォード主演(ジャック・クレイトン監督、フランシス・フォード・コッポラ脚本)の映画で世界中にその名を広めた。今また『ロミオとジュリエット』や『ムーランルージュ』のバズ・ラーマン監督の手により、レオナルド・ディカプリオを主演に迎え、独創的でスタイリッシュな映像と現代音楽にフィーチャリングされた楽曲、そして勢いのある若いキャストで豪華絢爛に甦る。

GGB-2.jpg 1922年頃のニューヨーク郊外にあるロングアイランド。第一次世界大戦後のアメリカはまだ禁酒法の時代だったが好景気に湧いていた。セレブたちの屋敷が建ち並ぶ高級住宅街の中でもひと際目立つお城のような屋敷で、夜な夜なド派手なパーティを催す男がいた。ニューヨークの証券会社で働くニック(トビー・マクガイア)は、その屋敷の隣にある小さなコテージに引っ越してくる。そして、屋敷の主で謎だらけの男ギャッツビー(レオナルド・ディカプリオ)と出会い、彼の謎めいた魅力に惹き込まれていく。

GGB-3.jpg 実は5年前、ギャッツビーとニックのいとこのデイジー(キャリー・マリガン)は相思相愛の仲だった。将校仲間と屋敷に招待されたギャッツビーは、初めて出会った上流社会の娘デイジーに一目惚れ。二人は将来を誓う仲になるが、ヨーロッパ戦線への出征をキッカケに音信不通となる。その後デイジーは大金持ちのトム(ジョエル・エドガートン)と結婚。そのデイジーの愛を取り戻すため、ギャッツビーはまるでメフィストと契約したファウストのように、闇の帝王マイヤーと組んで財を築き上げてきたのだ。

GGB-4.jpg ニックの目を通して描かれるギャッツビーの人生をかけた恋の顛末は、序盤からかなりの伏線が張られている。桟橋の先に立つ謎の男が対岸の緑の灯りへ向かって手を伸ばすシーン。何度も映される美しい高級住宅地から黒ずんだ鉱山のある貧しい地区を通って摩天楼が黄金に輝くニューヨークへと続く道。そこを最新の高級車で疾走するシーン。ギャッツビーが猛スピードで運転しながら早口で自らの生い立ちを語るシーンの嘘っぽさ。デイジーがギャッツビーに囁く「二人でどこかへ逃げたい」という言葉等々。

 また、デイジーの夫トム(ジョエル・エドガートン)は、放蕩三昧の不貞をはたらきながらも、デイジーとギャッツビーの仲に嫉妬する。トムのギャッツビーへの憎悪は、ギャッツビーの出自にまつわる真相をあばき、名家出身でないことを蔑み、自己保身のためなら平気で他人を抹殺する非情さを見せる。それに対しギャッツビーは、ひたすらデイジーの愛を信じ、自らの人生を捧げるほどの誠意を見せる。

GGB-5.jpg 最後にニックがギャッツビーにかけた言葉がいい。「彼等より君の方が上等だよ」。そこには、金持ちや上流社会の人々の傲慢と偏見に満ちた悪意とは対称的に、華麗なる幻想を抱きすぎた男の悲しい姿が浮き彫りにされている。原作が発行されてから4年後の1929年に世界恐慌が起こる。狂乱に興じていた鼻持ちならない連中の将来を暗示しているようで、実に感慨深いラストシーンだ。

 レオナルド・ディカプリオのどこか危うげなキャラも、いかにもスノッブな感じがしていい。前作ではロバート・レッドフォードとミア・ファローというキャスティングで、何であんな女に…?と不思議だったが、本作ではその理由がよく理解できた。決してケイト・マリガン扮するデイジーが絶世の美女という訳ではない。初めて出会った上流社会の娘を信用しすぎてしまったギャッツビーの純粋さが、彼を盲目的な恋に走らせてしまったのだと。景気の乱高下を経て格差の拡がる現代社会でこそ、人間の真価が問われているようだ。

(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://wwws.warnerbros.co.jp/thegreatgatsby/

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