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『フェニックス~約束の歌~』

 
       

phoenix-550.jpg『フェニックス~約束の歌~』

       
作品データ
制作年・国 2013年 韓国
上映時間 1時間40分
監督 ナム・テクス
出演 イ・ホンギ(FTISLAND)、マ・ドンソク、イム・ウォニ、ペク・ジニ、チョン・ミンソ、ジム・イヨン、チェ・グォン、ノ・ガンミン
公開日、上映劇場 2013年6月7日(金)~TOHOシネマズ 六本木、TOHOシネマズ(梅田、なんば、二条)、OSシネマズ神戸ハーバーランド ほか全国ロードショー

★イ・ホンギ舞台挨拶はこちら

~イ・ホンギの魅力満載のヒューマンドラマは、生きる輝きに満ち溢れている~

 

phoenix-1.jpg 韓国映画の難病ものとか親子の絆ものとか涙で訴えるような映画は、見る前に「泣くもんか!」と固く決心して見ることにしている。だが、“これでもか!”と名演の波状攻撃に遭い、結局は涙腺が決壊する羽目に……。本作は、韓国の人気ロックバンド「FTISLANDO」(エフティアイランド)のボーカリスト、イ・ホンギのスクリーンデビュー作とあって、アイドルがアイドルの役を演じるのか、と正直ナメテ掛かっていた。(イ・ホンギは、チャン・グンソクと共演したTVドラマ『美男〈イケメン〉ですね』(2009年)が日本でも大ヒットし、俳優としても活躍。武道館でのコンサートチケットは即完売という人気ぶり。)

phoenix-2.jpg ところが、弱さも強さも優しさも持ち合わせたイ・ホンギのキャラクターに親しみを感じ、舞台がホスピスということもあり、残されたわずかな時間を、残していく家族のために、あるいは世の中への償いのために、人生を後悔しないために、それぞれが一所懸命生きようとする姿に感動してぼろぼろ泣いてしまった。だが、そこに悲惨さはない。穏やかな最後を迎えられるよう手を尽くされるホスピスだが、死ぬのを待つだけではなく、最後だからこそ意味のある生き方をする濃密な時間が流れていることに、改めて気付かされる。

phoenix-3.jpg 人気アイドルのチュンイ(イ・ホンギ)は、わがままが過ぎて事件を起こしてしまい、その罰として社会奉仕を課せられる。それはホスピスでの奉仕活動だった。田舎にあるトンヒョン病院へマネージャーと共に派遣されたチュンイは、追って来た記者団の前では反省の言葉を述べるが、すぐにムッツリとして奉仕作業に真剣に取り組まない。若いがアイドルに全く関心のない指導役のアンナ(ペク・ジニ)の、「よくできました」のハンコがもらえなければ罰が解けないというのに、前途多難なチュンイ。

phoenix-5.jpg 入院患者の面々も個性的。元ヤクザのムソンはたばこスパスパ、元ミュージシャンのボンシクは夜遊び、幼い少女のハウンは勝手にチュンイを撮りまくり、幼い息子ヒムチャンのために童話を作る母親、そして、はつらつとしたアンナも患者の一人だった。彼らは経営が行き詰った病院のために、優勝賞金目当てにバンドコンクールへの出場を決意する。その奮闘ぶりを見兼ねて、というよりアンナのハンコ欲しさに協力するチュンイ。バンド活動を通じ深まるメンバーへの理解。次第に他者への思いやりを見せ始めるチュンイ。彼も大切な人を失うという辛い過去を引きずっていた。

 限りある時間にできることを精一杯やろうとする人々。思いがひとつになってもままならない状況に陥ってしまうこともある。一生懸命頑張っている人を見るとつい応援してしたくなる。その人が抱えている重荷を出来るだけ軽くしてあげたいと思う。自ら手を差し伸べる勇気があれば、困っている人も自らも救われるというもの。明らかに変化していく主人公チュンイに自らを重ねて、見終えてから得られる充実感に心が洗われるようだ。最後のビデオレターは心憎いほどダメ押しである。登場する面々は演技を超えた力があり、「泣くもんか!」の固い決意はもろくも崩壊してしまった。(最初から素直に見ればいいものを・・・)

(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://phoenix-band.jp/

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