原題 | BERNIE |
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制作年・国 | 2011年 アメリカ |
上映時間 | 1時間39分 |
監督 | リチャード・リンクレイター |
出演 | ジャック・ブラック、シャーリー・マクレーン、マシュー・マコノヒー他 |
公開日、上映劇場 | 2013年7月13日(土)~ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ、シネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、7月20日(土)~シネ・リーブル神戸、今夏~京都シネマ他全国順次公開 |
~天使か?悪魔か?善人すぎる殺人者の実録風コメディー~
いくらなんでも、人を殺してる男を「あの人は無罪よ」と町中の人が全面擁護するなんて、ありえない話だ。でも、そこまで皆に愛された聖人のような男が、なぜ罪を犯したのか、その動機と裁判の行方に興味をそそられる。96年アメリカのテキサスで実際に起きた殺人事件を、珠玉の青春ラブストーリー『恋人までの距離(ディスタンス)』やジャック・ブラック主演のヒット作『スクール・オブ・ロック』のリチャード・リンクレイター監督が実録風に映画化。ジャック・ブラックを再び主演に迎え、善人すぎる男が殺人者になるまでの経緯と裁判の行方を、町の人の証言も交えながら振り返るヒューマンドラマだ。描き方によって喜劇にも見えるところがこの作品のミソだろう。
葬儀社で働く主人公バーニーを演じるジャック・ブラックが芸達者ぶりを如何なく発揮し、バーニーの絵に描いたような善人ぶりが、むしろ滑稽に映る。無駄のない美しい動作と心配りの行き届いた対応、ゴスペルやカントリーのみならず葬儀の場ではどんなリクエストの曲でも見事に歌いこなし、「私が死んだときはバーニーに歌ってほしい」と生前リクエストする老女が続出。プライベートでは演劇の指導や慈善活動に取り組み、愛する家族を失った未亡人にも優しく声をかける。町の人たちにインタビューした映像が随所に挿入され、誰もが口を揃えてバーニーのことを褒め称える姿はやらせかと思うほどだが、小さな田舎町らしい群集心理なのかもしれない。
そんなバーニーが殺人を犯した相手は、町中の人から嫌われた大富豪の未亡人、マージョリー。名女優、シャーリー・マクレーン演じるこの憎まれ婆さんは、善人すぎるバーニーよりも現実味のあるキャラクターだ。未亡人となった気難し屋のマージョリーにバーニーが声をかけたことがきっかけで、数多くの二人きりの時間を過ごして信頼関係を築いてきたが、穏やかな時間は長くは続かなかった。「殺されても当然」と罵声が飛び、家族とも疎遠なマージョリーの憎まれ方は相当なものだが、シャーリー・マクレーンにかかると偏屈さもどこか愛おしく映る。
マージョリーの遺体発見によりバーニーが逮捕され、彼が全ての罪を認めた後も、「バーニー善人」神話は消えなかった。バーニーを極刑にしようと目論む地方検事ダニー(マシュー・マコノヒー)による法廷シーンは、バーニーに感情移入するかどうかによって大きく感じ方が変わってくるだろう。町の人の熱烈な援護射撃ぶりが、クールな犯罪実録ドラマとはほど遠いコミカルな余韻を残した。(江口由美)
公式サイト⇒http://bernie-movie.com/
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