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『ニューヨーク、恋人たちの2日間』

 
       

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作品データ
原題 2 Days in New York
制作年・国 2012年 フランス・ドイツ・ベルギー 
上映時間 1時間35分
監督 ジュリー・デルピー
出演 ジュリー・デルピー、クリス・ロック、アルベール・デルピー、アレクシア・ランドー他
公開日、上映劇場 2013年7月27日(土)~ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル梅田、京都シネマ、8月3日(土)~シネ・リーブル神戸、他全国順次ロードショー


~家族ほどうっとうしいものはない!?バツ付きアラフォーカップル爆笑騒動記~

 この作品を観れば、きっとフランス人に対するイメージがひっくり返るだろう。そしてフランス人と交流のある人なら、その面倒臭くも憎めないキャラクターに頷けるかもしれない。リチャード・リンクレイダー監督作『ビフォア・サンセット』(04)で大人の魅力を見せたジュリー・デルピーが、監督処女作『パリ、恋人たちの2日間』(07)の続編として選んだ舞台は、彼女が長年生活しているニューヨーク。パリ在住家族の来訪をきっかけに子持ちアラフォー男女の本音が炸裂するコメディーは、ただ笑えるだけでなく価値観の違いや、ニューヨークの今を滲ませる。ウディ・アレン顔負けのジュリー・デルピーによるマシンガントークも必見だ。

 前作の恋人と別れ、二人の間にできた息子を引き取ってニューヨークで暮らす写真家、マリオン(ジュリー・デルピー)は、ラジオDJとして活躍中のバツ2男ミンガス(クリス・ロック)と彼の一人娘と同棲中。オバマ大統領をこよなく愛するミンガスと、国籍や人種を超えていい関係を築いていたマリオンだったが、マリオンの個展を観るためパリより父と妹、そしてなぜか妹の彼氏までもが、マリオンのアパートにやってくる。我が物顔でくつろぎ、食事中にセックスや人種問題に関して破天荒な持論を展開するマリオンの家族たちにミンガスは思わず言葉を失くしてしまう。おまけに、アパートの住人から苦情を受けたマリオンはその場しのぎに、自分が脳腫瘍で余命3ヶ月と嘘をついてしまい・・・。

 吉本新喜劇にも匹敵するドタバタぶりや、ありえない非常事態が連発するのだから、マリオンがずっと困り顔になるのも無理はない。パリからやってきた父親を演じるジュリー・デルピーの実父アルベール・デルピーの怪演や、共同脚本も手がけた妹役アレクシア・ランドーとの血みどろ姉妹模様、そしてフランス人の良識が疑われる曲者ぶりを見せる妹の彼氏(おまけにマリオンの元カレ)の招かざる客ぶりがとどめを刺す。

 そんな変人集団とマリオンとの板挟みに悩むミンガスの健気さは、心底同情したくなるほどだ。家族ほど厄介なものはないが、本音を剥き出しにするマリオンの家族がどこか憎めないのは、きっとミンガスも同じことだろう。家族という普遍的な部分に目をやりながら、一方では空気を読まない奔放さが浮いてしまったり、「マリオンの余命3ヶ月」という噂が流れた途端、酷評された個展の作品が完売する、自由の都ニューヨークの皮肉な一面も映し出している。

 冒頭ではテレビ番組内で「木を守る男」としてダニエル・ブリュールが登場。更に、ミカ・カウリスマキ監督作『GO!GO!L.A.』(97)でジュリー・デルピーと共演したヴィンセント・ギャロが本人役で登場するなど、 “美味しい”シーンを見つけるのも楽しい。自身の子育て経験を脚本に反映し、さらにパワーアップしたジュリー・デルピーの才気とコメディーセンスに、またしても舌を巻いた。(江口由美)

公式サイト⇒http://newyork-2days.com/
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