『オブリビオン』
原題 | Oblivion |
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制作年・国 | 2013年 アメリカ |
上映時間 | 2時間04分 |
監督 | 監督・原作・製作:ジョセフ・コシンスキー(『トロン・レガシー』) |
出演 | トム・クルーズ、モーガン・フリーマン、オルガ・キュリレンコ、アンドレア・ライズブロー、ニコライ・コスター=ワルドー、メリッサ・レオ |
公開日、上映劇場 | 2013年5月31日(金)~全国ロードショー |
~ビジュアル・アクションだけのSF映画ではない。トムが魅せる精神性の高い世界観にこそスリルと感動がある~
トム・クルーズ主演のSF映画『オブリビオン』は、2077年というそう遠くない未来が舞台。宇宙からの侵略者スカブと60年間も戦い続け、地球は壊滅状態となり、わずかに生き残った人類は土星の衛星タイタンへと移住していった。地球の水を確保するプラントをスカブから守っているのがジャック(トム・クルーズ)と妻のヴィクトリア(アンドレア・ライズブロー)だった。二人は地上1000メートルにあるスカイタワーで生活をし、無人偵察機ドローンのメンテナンスをしながら地球を監視していた。
ジャックの日課は空中艇バブルシップに乗って、人類が消えた地球上を偵察することだった。アメフトのスタジアムや、ワシントンタワーやエンパイアステートビルなど、わずかに残る残骸が、かつての地球を偲ばせる。ジャックは時々ある女性の夢を見た。何か大切なものを伝えようとするその眼差しは、ジャックの心の中で次第に大きくなっていく。そんな矢先、宇宙船が墜落し、夢の中の女性とそっくりの女性を救い出す。
ジュリア(オルガ・キュリレンコ)と名乗る女性は、60年前タイタンへ向けて発射された宇宙船の乗組員だった。彼女は、休眠状態から目覚めるなりジャックの顔を見て彼の名を呼んだ。初対面のはずなのに、なぜ? 60年という時空を超えて繋がる想いがあるとするなら、一体地球上で何が起こったのか? 夢の中の情景とジャックとジュリアとの関係は? そして、思わぬ敵と遭遇したジャックの運命は? 侵略者スカブとは?
まず、ジャックとヴィクトリアが暮らすスカイタワーの、シンプルでクールなデザインに驚かされる。まるで『2001年宇宙の旅』の宇宙ステーションを連想させる静謐さだ。ただ、スカイタワーはガラス張りで、地上1000メートルからの眺めも絶景。ハワイのマウイ島にあるハレアカラ火山(3,000m)からの景色を多方向から撮影したものを合成したらしい。この荒廃した地上とは対称的なビジュアルは、孤立した空間に二人だけが存在する異様さを強調しているようだ。さらに、住環境や二人の衣装に至るまで、白・黒・グレーを基調とした無機質なトーンは、本来人間が持つ温もりからかけ離れたイメージ。
また、ドローンに追掛けられる深い渓谷での戦闘シーンでは、『スター・ウォーズ』でも用いられた手法だが、本作がCGを駆使したアクションSFと大きく違う点は、ジャックが本能に従って選択する人間らしい行動にある。コシンスキー監督が最初にデザインしたのは、ジャックが地上偵察用に乗るバブルシップだったそうだ。トム・クルーズが戦闘機に乗って大活躍した『トップガン』に魅せられた世代のひとりだった監督のこだわりともいえる。あの頃より年齢を重ねているトム・クルーズだからこそ表現できる、人類滅亡という危機的状況の中の悲壮感と必死感が滲み出て、ヒューマンドラマとしても見応えある。
ジュリアを演じたウクライナ出身のオルガ・キュリレンコ(『007慰めの報酬』『故郷よ』)と、ヴィクトリアを演じたイギリス出身のアンドレア・ライズブロー(『ウォリスとエドワード 英国王室をかけた恋』『シャドー・ダンサー』)の情感豊かな演技と、謎を解き明かす重要な役のモーガン・フリーマンが、トムが演じるキャラクターの人間性を高め、さらに作品に奥行きを出している。
それにしても、トムほど映画のヒットに尽力し、トップスターとしての意識の高い俳優は珍しい。常に新しい役に挑戦し、自分を限界まで追い込むストイックさや、キャンペーンでのサービス精神もピカイチ。彼が世界各地の街や砂漠などで、愛する人を救うために一所懸命に走る姿にはいつも感動させられる。時空を超えた愛に包まれるラストシーンでは、壮大な人類の希望を感じることができるだろう。これもトムのカリスマ性の賜物か!?
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://oblivion-movie.jp/
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