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『ベルリンファイル』

 
       

Bereurlin-550.jpg『ベルリンファイル』

       
作品データ
原題 Bereurlin 
制作年・国 2013年 韓国
上映時間 2時間
監督 リュ・スンワン
出演 ハ・ジョンウ、ハン・ソッキュ、チョン・ジヒョン、リュ・スンボム
公開日、上映劇場 2013年7月13日(土)~新宿ピカデリー、丸の内ピカデリー、なんばパークスシネマ、梅田ブルク7、MOVIX京都、神戸国際松竹 他全国ロードショー

 

~14年の進化にも変わらない“極限の愛”~

 

Bereurlin-2.jpg  日本で韓国映画ブームに火を着けたのは14年前の1本の映画『シュリ』(99年)だった。北(女)と南(男)の諜報員が互いに身分を秘めて出会い、許されぬ恋に落ちる…分断国家だけに可能なスパイ・サスペンスは実に鮮烈だった。 あれから14年、韓国映画の進化発展は広く知られるところだが、『007』シリーズをはじめ、もっぱら欧米の独壇場だったスパイアクションでも常識を覆してみせたのが韓国映画『ベルリンファイル』だ。

 Bereurlin-4.jpg ドイツの首都ベルリンを舞台に、北朝鮮の秘密工作員が“近親憎悪”の韓国情報員と熾烈な戦いを繰り広げる物語。北朝鮮が現実に世界を騒がせる今、リアリティーあふれるスパイものは分断国家だけの“資産”に違いない。 キャストも、主人公・北のスパイ、ゴーストに近作『哀しき獣』が記憶に新しいハ・ジョンウ。敵対する韓国工作員に懐かしや『シュリ』のハン・ソッキュが“スパイ復帰”。ゴーストの妻役に『猟奇的な彼女』で人気を博したチョン・ジヒョン。顔ぶれが味わい深い。

  全編、憎悪に満ちた南北スパイの息詰まる死闘が繰り広げられる。ハリウッド顔負けのカーチェイス、香港カンフーにも劣らないキレのいいアクションには舌をまく。アクション監督が『G.I.ジョー  バック2リベンジ』で武術コーディネーターを務めたチョン・ドゥホンと聞けば“ハリウッド級”も納得だ。

Bereurlin-3.jpg  韓国情報院の凄腕エージェント、ジンス(ソッキュ)がベルリンの高級ホテルで武器取引の監視中、モニターに北のスパイ“ゴースト”(ジョンウ)を認めて驚く。キム・ジョンイル死去前にヨーロッパに移した40億ドルの秘密口座を突き止められる、と考えたジンスは部下に突入を命じるが、モサド(イスラエル情報機関)の横やりが入り逃してしまう…。 めったに姿を現さない幻の男は、北朝鮮で英雄と崇められ数多くの勲功に輝く。それほどの大物でさえ国家の罠にはめられるのだから「北は得体が知れない」という韓国の視点か。

Bereurlin-5.jpg  ゴーストには大使館で通訳をしている妻(チョン・ジヒョン)がいるが、彼女が二重スパイではないかと疑われ、ゴーストも疑いの目を向けるが、彼女が妊娠していたことを知って“無実”と悟る。かくて祖国から追われるハメになった夫婦は追っ手を逃れるため、祖国と縁を切り、韓国スパイ、ジンスと組んで執拗な敵に立ち向かう。究極の選択、それは愛する妻奪還のためだった…。

  ゴーストの存在感が極めてリアルだ。野性味あふれるハ・ジョンウが『哀しき獣』に続いて孤独な一匹狼を熱演。最初は宿敵として追い詰め、最後には2人で決死の敵陣突入を試みるハン・ソッキュとの新旧・南北コンビ、笑顔を封印して国に翻弄される美しい妻を演じたチョン・ジヒョン。3人のアンサンブルが絶妙だ。

  14年間、朝鮮半島情勢はほとんど変わりがなく、逆に悪化しているようにさえ見える。だが映画では、激闘の果て、最後に浮かび上がるのは“国家を超えた極限の愛”。『シュリ』以来、変わることのない主題が韓国映画人気の秘密だろう。  

(安永 五郎)

公式サイト⇒ http://berlinfile.jp/

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