『ドリフト』
原題 | Drift |
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制作年・国 | 2012年 オーストラリア |
上映時間 | 1時間54分 |
監督 | 共同監督:モーガン・オニール、ベン・ノット |
出演 | マイルズ・ポラード、ゼイヴィア・サミュエル、サム・ワーシントン、ロビン・マルコム、レスリー=アン・ブラント、アーロン・グレナン、スティーヴ・バストーニ |
公開日、上映劇場 | 2013年5月25日(土)~ヒューマントラストシネマ渋谷、テアトル梅田、OSシネマズ神戸ハーバーランド、7月6日(土)~京都みなみ会館 他順次公開 |
~ビッグ・ウェイブと共に、人生の波も乗り越えるサーファーたち ~
サーフィン映画といえば、ジョン・ミリアス監督の『ビッグ・ウェンズデー』(1978)を思い出す。ジャン・マイケル・ヴィンセントやウィリアム・カットといった70年代活躍したイケメン俳優たちが、ベトナム戦争を乗り越えてビッグ・ウェイブに果敢に挑む若者を爽やかに演じ、青春ドラマとして強く印象に残っている。
その後、撮影技術の向上でサーフィンシーンもどんどん迫力ある映像が見られるようになり、今ではそれが大前提の上でドラマ性やオリジナリティが求められるようになっている。昨年公開のサメに襲われて左腕を失った少女の物語『ソウル・サーファー』や、今年6月公開の『マーヴェリックス/波に魅せられた男たち』のように、実話に基づく作品が多くなってきた。本作も、オーストラリアの西海岸にある小さな街から、世界のサーフ・ブランドとして成功した実話にヒントを得て作られた物語である。
暴力的な父親から逃げてきた母子3人。サーフィン大好きな兄弟は、理想的な波が打ち寄せる海岸に魅せられて、ある小さな街に住みつくことになる。母親は縫製の仕事をしながら二人の息子を育てる。成長した兄弟はある日、波に飲まれた弟ジミー(ゼイヴィア・サミュエル)を救おうと兄のアンディ(マイルズ・ポラード)は足を怪我してしまう。その後、天性の運動神経でサーフィンに打ち込むジミーに対し、アンディは母親のためにも自立を考えるようになる。
そんな二人の前に、フリーのサーフィン・カメラマンのJB(サム・ワーシントン)とハワイ生まれの美しい女性ラニ(レスリー=アン・ブラント)が現れる。自由な旅人に影響されて、より積極的な生き方を模索する兄弟。そこで、家のガレージでサーフ道具を作って売るという商売を始める。時代は丁度サーフィン・ブームが広がりを見せた頃で、サーファー自らが考案したサーフボードやウェットスーツは人気が出て、商売も波に乗る。ところが、街に店を出した矢先にドラッグ絡みのトラブルに巻き込まれ、兄弟の間にもひずみが入る。そして、ビッグ・チャンスとなる高額賞金がかけられたサーフィン大会が初めて開催される。
サーフィン映画といえば夏のイメージだが、本作は敢えて冬に撮影されたという。その理由は、インド洋に面したこの地域は、冬の方が大きな波が立ちやすく、また木々の緑も海の青さも深くて美しいからだ。自然が濃い色彩を放ち、人の営みを鮮烈に浮上させる映像は、1970年代という時代性と共に、若者が自力で活躍できるまでの情景を深みのあるドラマで描出している。脚本も担当したモーガン・オニール監督がドラマ部門を、ベン・ノット監督がサーフィンシーンを担当するという二人の監督による共同演出が功を奏しているようだ。今まであまり見られなかったオーストラリア西海岸の雄大な自然を背景にした、新たなサーフィン映画が誕生した。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://drift-movie.net/
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