原題 | STOKER |
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制作年・国 | 2012年 アメリカ |
上映時間 | 1時間39分 |
監督 | パク・チャヌク |
出演 | ミア・ワシコウスカ、ニコール・キッドマン、マシュー・グード他 |
公開日、上映劇場 | 2013年5月31日(金)~TOHOシネマズシャンテ、TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、OSシネマズミント神戸、TOHOシネマズ二条他全国ロードショー |
~少女が本性に目覚めるとき、大人の扉が開く~
少女が大人の女になる物語は数あれど、本作はある意味赤裸々で、妖艶で、そして毒がある。三人の登場人物を軸にサスペンス調で、青虫が蝶になるがごとく少女が脱皮する様を見せる作品は稀有だ。『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』のパク・チャヌク監督が、初となるハリウッド作品でも美しさと残虐さが同居する独自の美学を貫いた。
高校生インディアの父が不可解な死を遂げ、その葬儀に消息不明となっていた叔父が表れる。狩りが趣味だった父と仲が良かったインディアは、美しい母と馬が合わなかった。しかし、母が叔父を家に泊めると言いだし、インディアは叔父も敵対視する。叔父の滞在と時を同じくして家政婦が姿を消し、叔父の顔を観て何かを告げようとした大叔母も連絡がつかなくなってしまう。
ミア・ワシコウスカが鋭すぎる感受性を持ち合わせた優等生インディアを、ニコール・キッドマンが娘とうまくコミュニケーションを取れない母親を演じ、抜けるような白い肌を持つ二人の美貌が、歪んだ母娘関係を冷ややかに映し出す。そして物語の鍵を握る、謎めいた叔父を演じるマシュー・グードの仮面のような表情が、終始不気味でたまらない。母親と親密になる一方、インディアに近付く叔父の動きが、三人の関係をどんどん変化させていく。
生まれた時から毎年お誕生日に贈られる靴、不気味な地下室にある巨大な冷凍庫、庭に置いてある大きな石。様々なモチーフが、静かに事件の匂いを漂わせる。インディアが住む家での心理劇を中心に、どのシーンも息を呑むような美しさと緊張感があり、役者たちの表情や呼吸一つ一つに惹き込まれる。母親のブロンズヘアをインディアがブラシでとく場面がアップで映し出され、次第に褐色の草原に潜んで狩りをするインディアのエピソードに転じる映像表現には唸らされた。
最初は父の死に心を閉ざしていたインディアが、自らの押さえつけていた感情や欲望に目覚め、シャワーを浴びながら自慰行為をしてほほを紅潮させたり、叔父との関係が大きく変化していく様は事件の真相以上にスリリングだ。ミア・ワシコウスカの研ぎ澄まされた表現力が、自分の本性に目覚め、大人の女性になっていく少女の成長ぶりを私の瞼に焼き付けさせた。どこを切り取っても完璧なまでの映像美で、女性の残酷な性をスタイリッシュに描いてきたパク・チャヌク監督の秀作。音楽の使い方も品があり、そして官能的だった。(江口由美)
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