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『奇跡のリンゴ』

 
       

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作品データ
制作年・国 2013年 日本
上映時間 2時間9分
原作 石川拓治『奇跡のリンゴ「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録』(幻冬舎文庫)
監督 中村義洋 
出演 阿部サダヲ、菅野美穂、池内博之、山﨑努、原田美枝子、笹野高史、伊武雅刀
公開日、上映劇場 2013年6月8日(土)~全国東宝系ロードショー


~10年越しの悲願を支える家族の愛~

ringo-2.jpg 10年という年月は過ぎてみればあっという間かもしれない。しかし、周囲の反対を押し切って始めた無農薬リンゴづくりを失敗し続け、家族が貧しい生活を強いられる中で自分の夢を貫く日々は、とてつもなく長く感じたことだろう。絶体絶命の苦しみを乗り越え、悲願の無農薬リンゴを作り上げたのは、リンゴ農家の木村秋則さん。『ゴールデンスランバー』、『ポテチ』の中村義洋監督が、富士山のように雄大な山の麓に広がる青森のリンゴ畑を舞台に、無農薬リンゴづくりへの情熱に満ちた木村さんの半生を、直球ど真ん中の感動物語に仕立て上げた。

 幼い頃の木村は、家にある電気機器の分解につい夢中になっては、父親に叱られる個性的な子どもだった。しかし原田美枝子演じる母親は「100も1000も失敗して、人は答えを見つける」と息子に声をかける。この言葉が、迷路のような無農薬リンゴづくりに没頭していく木村の心の支えになるのだ。何かに夢中になっている子どもに母親がかける言葉は、その子の未来を決めるかもしれない。三児の母の私にとっては身の引き締まる想いがした。

ringo-3.jpg その後、木村と見合い結婚した妻美栄子による無農薬リンゴづくりの長い道のりが始まる。『夢売るふたり』の阿部サダヲが、周りからバカ扱いされ、身も心もボロボロになりながら、初志貫徹するパワフルな主人公木村を力いっぱい演じ、ぐいぐい惹き込まれる。一方、美栄子はやさしいトーンの津軽弁で、どんな苦境にも可憐に微笑みながら、くじけそうになる夫を励まし続ける。私が逆立ちしても到底なれそうにない良妻賢母を演じる菅野美穂は、女性が観ても惚れ惚れする素晴らしさだ。

ringo-4.jpg 素晴らしいのは夫婦愛だけではない。義父役山﨑努の戦地の地獄を見た男ならではの潔く覚悟を決める姿や、娘婿を信じる姿も、伝統的な日本の父親力を見た思いがする。子どもたちも「何のために貧乏していると思ってるの!」と、くじけそうな木村を叱咤する。支えてくれる家族の温かさがこんなに心に沁みる映画は、そうないだろう。

 

 

ringo-5.jpg 「一つのものに狂えば、いつか答えが見つかる」。とにかく諦めないことが奇跡を呼ぶという力強いメッセージが、作品を貫く。木村さんの人懐っこい笑顔の裏にある苦しい時代を知り、奇跡が生まれた瞬間に涙すると共に、初めて知ったリンゴ栽培の大変さと“無農薬”の持つ重みを噛みしめた。(江口由美)
 

 公式サイト⇒http://www.kisekinoringo.com/
(C) 2013「奇跡のリンゴ」製作委員会