『ヒステリア』
原題 | Hysteria |
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制作年・国 | 2011年 イギリス・フランス・ドイツ |
上映時間 | 1時間40分 |
監督 | ターニャ・ウェクスラー |
出演 | マギー・ギレンホール、ヒュー・ダンシー、ジョナサン・プライス、フェリシティ・ジョーンズ、ルパート・エヴェレット |
公開日、上映劇場 | 2013年5月11日(土)~シネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、5月18日(土)~シネ・リーブル神戸 ほか全国順次公開 |
~あまり大きな声では話せない“救世手”が生み出されるまで~
古代ギリシャの時代から女性の気の病は“ヒステリー”と呼ばれていたそうな。今ではそんな病名は存在しないが、その“ヒステリー”の治療方法として、女性の大事な部分をマッサージする方法が執られていたというから、びっくり! しかも、19世紀末の頃まで医師が直接手でマッサージしていたというから、正に“Oh,my God!”である。本作は、19世紀末ヴィクトリア朝のロンドンが舞台、ある若い医師により発案された機械:電動バイブレーターが、女性にとって救世主ならぬ救世“手”となった実話を基にした、痛快ラブコメ。
第二次産業革命真只中の近代都市ロンドンでも、まだ細菌学の認識も甘く、清潔、不潔の区別もされない病院が多かった。そんな状況に嫌気がさしていた若い医師モーティマー・グランビル(ヒュー・ダンシー)は、ダリンプル医師(ジョナサン・プライス)の精神科クリニックを求職活動のため訪ねる。そこは女性患者が殆どで、様々な気の病で来院しては、ダリンプル医師の特別な治療を受け、みな満足気な表情で帰っていった。なんと、女性患者の欲求不満を解消するある方法が執られていたのだ。モーティマーも同じような治療を始めると、若くてイケメンの医師とあって、患者数は倍増。だが、さすがに手首が腱鞘炎になってしまって、治療にも支障が出るようになる。
ダリンプル医師は、モーティマーにクリニックを継がせようと次女のエミリー(フェリシティ・ジョーンズ)と婚約させる。ところが、社会奉仕活動ばかりして一家にとっては問題児の長女シャーロット(マギー・ギレンホール)が現れて、事態は思わぬ方向へ変化していく。貞淑で美しいが保守的なエミリーに比べ、シャーロットは女性の自主性を重んじる先進的な考えの持ち主だった。貧しい人々の力になろうと、子供たちの教育や女性の仕事や医療に一所懸命尽力していた。モーティマーがこだわった細菌学の知識にも長け、一緒にいるだけでわくわくする何かを感じるようになる。ところが、シャーロットが暴力沙汰を起こし逮捕され、裁判にかけられることに・・・。
モーティマーは、発明好きの友人エドモンド(ルパート・エヴェレット)の家でたまたま手にした回転器のようなものを見つけ、治療に役立てるのでは?と思いつく。果たして、その器具は“ゴッドハンド”の代わりになれるのだろうか? シャーロットとの関係はどうなるのか?
あまり口に出して語られることがなかった電動バイブレーターを、アダルトプレイグッズの一つだと誤解していた。まさか医療用器具として特許登録されていたとは驚きだ。しかも、それによって気の病が改善し幸せな日々を送れるようになるとは、この画期的な発明器具への認識を改めなくてはね!
デリケートな話題だが、急速に変化しつつあった時代を背景に、保守的な階級社会への皮肉や、女性への偏見や蔑視など様々な問題をコミカルに描いて、実に小気味いい。マギー・ギレンホールの明るい笑顔に勇気付けられて、爽快な気分になれる。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://hysteria.ayapro.ne.jp/
© 2010 Hysteria Films Limited, Arte France Cinema and By Alternative Pictures S.A.R.L.