『ブルーノのしあわせガイド』
原題 | SCIALLA! |
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制作年・国 | 2011年 イタリア |
上映時間 | 1時間35分 |
監督 | フランチェスコ・ブルーニ |
出演 | ファブリッツィオ・ベンティヴォリオ、バルボラ・ボブローヴァ、ヴィニーチョ・マルキオーニ、フィリッポ・シッキターノ |
公開日、上映劇場 | 2013年5月4日(土)~梅田ガーデンシネマ、6月15日~神戸元町映画館、近日~京都シネマ ほか全国順次公開 |
~落ちこぼれの息子ルカと父との“ポジティブに生きる姿”が爽快!~
力を抜いて自分なりに少しずつ積み重ねていれば、人生なんとかなるさ、くよくよするなと、軽く背中を叩いて励ましてくれるヒューマン・コメディ。おしつけがましくなく自然体で、心に春風が舞い込んできたようなさわやかさ。原題の『シャッラ』は、ローマの若者達が言い出して流行語となった言葉。「いいから、まあまあ、まあいいさ、落ち着いて」の意味で「Take it easy!」と同義語。
ブルーノは中年の元教師。今はゴーストライターと家庭教師をして生計をたてている。お金も定職もないが、自由で気ままな毎日。ある日、家庭教師の生徒の一人ルカの母親から、海外に行くので半年ほどルカを預かってほしいと頼まれる。おまけに、ルカは息子だと告白され、とまどうブルーノ。父であることを隠しての共同生活が始まる……。15歳のルカは、学校になじめず勉強も嫌いな劣等生。でも、性格は明るく、好奇心旺盛。はじめは互いの生活に干渉しないと宣言していたブルーノも、ルカのあまりにルーズな生活ぶりに、思わず心配になって口を出し、勉強の面倒をみるようになる。それまで無気力だったブルーノが、ルカのいい父親でありたいと願う心から、少しずつ変わっていく。穏やかであたたかな口調のブルーノと、若者言葉を連発するルカとの、テンポのよい会話が楽しく、ユーモアにあふれている。
何か大きなことをしたいというルカの若さゆえの無鉄砲なふるまいのために、二人はトラブルに巻き込まれるが……。ブルーノには、かつて教壇で自分 の信念に従い、教師として理想を追いかけていた時期があった。そのときの頑張りが、今になって、親子の窮地を救うという展開がな んとも嬉しい。落第確実で、全く勉強もしていなかったルカが、ブルーノの指導を受け、一発逆転をねらって試験勉強に励む。試験の結果が出た時のルカの決断が、なによりも爽快なラストとして、観客の胸を温かくする。学校では問題児でも、性格のよい楽観的なルカがすてきだ。監督は、深刻な不況や就職難の中で、暗鬱たる将来しかみえなくても、今の若者たちなら大丈夫というメッセージをこの作品に込めたそうだ。
映画は、教育への予算を削りすぎて学校施設が荒れているというイタリアが抱える現実の問題をも映しだす。ルカの学校のしっかり者の女性教師と、ブルーノとのぶつかりあいも興味深い。テオ・アンゲロプロス監督の『永遠と一日』 (1998年) で詩人を演じたファブリツィオ・ベンティヴォリオがブルーノを演じ、渋いマスクでいい味を出している。ルカ役で映画初出演の俳優もこれからが期待できる。なにより二人の笑った顔がいい。シンプルで元気が出る映画。
(伊藤 久美子)
【おまけ情報】
息子ルカを演じたフィリッポ・シッキターノ(1993年生まれ)は、今年の【イタリア映画祭2013】で上映される『ふたりの特別な一日』(2012)に主演している。『ブルーノのしあわせガイド』で名優ファブリツィオ・ベンティヴォリョと共演という幸運に恵まれ、鮮烈なスクリーンデビューを果たして、今やイタリアのアイドル的人気者となっている。
公式サイト⇒ http://www.alcine-terran.com/bruno/
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