制作年・国 | 2013年 日本 |
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上映時間 | 2時間8分 |
原作 | 有川浩著『図書館戦争 図書館戦争シリーズ(1)』角川文庫刊 |
監督 | 佐藤信介 |
出演 | 岡田准一、榮倉奈々、田中圭、福士蒼汰、栗山千明、石坂浩二他 |
公開日、上映劇場 | 2013年4月27日(土)~全国東宝系ロードショー |
~守るのは「本と自由」、鬼教官と新人隊員が挑む壮絶な戦い~
日本図書館協会による網領『図書館の自由に関する宣言』に、「図書館の自由が侵される時、われわれは団結して、あくまで自由を守る」と明記されていることを、私はこの映画で初めて知った。本を読む自由が失われるなんて今では他人事のように思えるが、日本も戦前は大きな過ちを犯し、その反省の結果、上記の宣言が記されているのだ。原作者の有川浩氏は図書館で偶然『図書館の自由に関する宣言』を見たことがきっかけとなり、『図書館戦争』を執筆したという。自由な表現を守ることが難しく思える風潮の今だからこそ、エンタテイメント大作に秘められたメッセージが胸に突き刺さる。
舞台となるのは、昭和から平成ではなく“正化(せいか)”という時代に移った日本。国家によるメディアの検閲が行われる時代に移行していた。メディア検閲を認める「メディア良化法」や、メディア良化法を推進する国家武装組織「メディア良化隊」が誕生し、有害と見なされる書籍は図書館や書店から次々に排除されていく。本を読む自由が脅かされる中、図書館側から自衛組織「図書館隊」が発足し、メディア良化隊と攻防を続けていた。書店や図書館がまさに戦場となる物語である。
迫力ある戦闘シーンと同時並行で描かれるのは、図書館隊新人隊員の笠原郁(榮倉奈々)と鬼教官堂上篤(岡田准一)のラブストーリーだ。郁の高校時代、書店で本を守ってくれた図書館隊の「王子様」探しと、それを見透かしたように鬼指導をする堂上。反発から信頼へと発展する二人の関係は、メディア良化隊との果敢な戦いの中で、「本を読む自由を守る」同志としてより深い絆に変わっていく。鍛え上げた身体に鋭い眼光で、本を、そして人質となった郁たちを助けようとする堂上演じる岡田准一のカッコよさは、必見ものだ。見惚れるぐらいキレのいいアクションが炸裂し、見せ場の戦闘シーンを大いに盛り上げている。
メディア良化隊によって、図書館の本が無残に焼かれていく光景を見ると、戦場のような痛みを感じずにはいられない。自衛隊並みの厳しい訓練を積み、防御する受け身の闘いに信念を持って身を投じる図書館隊の姿は、フィクションでありながらも、実写ならではの真実味をもって胸に迫ってきた。実写版オリジナルキャラクターとして図書隊トップの仁科(石坂浩二)を登場させ、図書隊の祖、稲嶺指令には故児玉清をキャスティングするなど、佐藤信介監督(『GANTZ』シリーズ)のこだわりが、新しい『図書館戦争』ワールドを作り上げている。柔軟を併せ持つ有川ワールドの決定版は、改めて「好きな本を読める」当たり前と思っていた自由に気付かせてくれた。(江口由美)
公式サイト⇒http://www.toshokan-sensou-movie.com/index.html
(C) “Library Wars” Movie Project