『ベラミ 愛を弄ぶ男』
原題 | Bel-Ami |
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制作年・国 | 2012年 イギリス |
上映時間 | 1時間42分 |
原作 | ギィ・ド・モーパッサン |
監督 | デクラン・ドネラン、ニック・オーメロッド |
出演 | ロバート・パティンソン、ユマ・サーマン、クリスティン・スコット・トーマス、クリスティーナ・リッチ |
公開日、上映劇場 | 出演: 2013年3月9日(土)~ヒューマントラストシネマ渋谷、4月13日(土)~梅田ガーデンシネマ、6月1日(土)~元町映画館、以降~京都シネマ ほか全国順次公開 |
~ロバート・パティンソンの怪しい眼差しの先にあるものは?~
『女の一生』で有名なフランスの文豪モーパッサンが、35歳の時に書いた『ベラミ』の映画化。19世紀末のパリ、アール・ヌーヴォや高級娼婦、ムーラン・ルージュ、印象派画家たちの活躍など、ベルエポックと呼ばれた時代、貧しい帰還兵が狂乱の時代に乗じてのし上がろうとする物語。自らの男としての魅力を武器に、上流階級のマダムたちを魅了しながら、社会的地位と財力を獲得していく。そんな野心あふれる主人公を、『トワイライト』シリーズで一躍スターダムに上った26歳のロバート・パティンソンが、30代のクリスティーナ・リッチ、40代のユマ・サーマン、50代のクリスティン・スコット・トーマスという熟女相手に熱演している。
魅力的な目をしたジョルジュ・デュロワ(ロバート・パティンソン)は、アルジェリアからの帰還兵で、貧しい屈辱的な暮らしの辛さを痛感していた。そんな矢先、旧友に新聞社の仕事を紹介され、編集長や社長を通じ上流階級の人々と交流を持つようになる。そこで彼が気付いたのは、上流階級のマダムたちの影響力の大きさだった。中でも、編集長の妻マドレーヌ(ユマ・サーマン)は才色兼備で、ジョルジュの原稿を代筆したり、社交界での人脈拡大の援助をしたりする。ところが、ジョルジュを政変謀略のオトリとして画策する社長らの企みを知り、逆襲に出る。その手段として、マダムたちを陥落させ、影の力を利用していくが、さらに高見を狙うようになる。
主人公ジョルジュは、フランスの名優ジェラール・フィリップ(1922~1959)が『赤と黒』(1954)で演じた青年ジュリアンを彷彿させるような役柄だが、哀愁の陰やロマンの香りが薄くなっている。上流階級の夫人や娘を踏み台にしてのし上がろうとする男性像は、格差社会が広がりつつある現代を反映しているのか、ドライな感触すらする。上り詰めるジョルジュの先にあるものが決して順風満帆でない予感がするのは、やはり本当の信頼と尊敬と愛情を得ていないからかもしれない。
クリスティーナ・リッチが別人のように、アカ抜けたスッキリ美人になっているのに驚いた。ユマ・サーマンもクリスティン・スコット・トーマスも、この時代にあっては少し痩せすぎだが、エレガントなマダムの貫録は十分。美術や衣装の豪華さにもご注目。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://belami-movie.info/
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