原題 | 容疑者X |
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制作年・国 | 2012年 韓国 |
上映時間 | 1時間59分 |
原作 | 東野圭吾「容疑者Xの献身」(文藝春秋刊) |
監督 | パン・ウンジン |
出演 | リュ・スンボム,イ・ヨウォン,チョ・ジヌン,クァク・ミノ,キム・ボラ |
公開日、上映劇場 | 2013年4月20日(土)~シネマート六本木、シネマート心斎橋 にて公開 |
~理性では決して掴めない愛のミステリー~
東野圭吾著「容疑者Xの献身」が韓国で映画化された。登場人物の配置が原作と違っており,日本映画で福山雅治が扮した湯川は登場しない。そのため,物理学者と数学者という頭脳戦は描かれない。刑事ミンボムが石神に当たる数学教師ソッコの高校の同級生として登場する。直感的なミンボムの感性が論理的なソッコの理性に挑むという図式だ。献身というテーマを前面に押し出し,論理では計れない心情を描くことに主眼が置かれている。
生きる意味を失ったソッコは,隣室に越してきたファソンを拠り所に生きていた。元夫から逃げてきたファソンは,再び現れた元夫の粗野で執ような暴言や暴力から逃れようとして元夫を絞殺してしまう。ソッコは,ファソンを守るため虚偽の物証を作り出すなど完璧とも言える計画を立てる。ソッコは,難解な問題を作ることとそれを解くこととどっちが難しいかと問う。ソッコが提示した問題を解いても誰も幸せにならず,何も変わらない。
2より大きな偶数は2個の素数の和で表せるというゴールドバッハの予想は,直感では正しくても証明がない。数学における証明で見えてくるのは,純粋な結晶のように端正で究極的な美である。ファソンが元夫を殺害した犯人であるというミンボムの確信は,心証だけで物証がない。彼が物証を追い求めた先に見たものは,自分の人生を捧げた献身的な愛だった。それに気付いたミンボムは「こんなのは本当の愛じゃない」とソッコを憐れむ。
ミンボムは元妻から「あなたは本当の愛を知らない」と言われていた。一方,ファソンはソッコが乗せられた押送車に取り縋って嗚咽する。この彼女の反応こそ,監督が描きたかったものだろう。心情を伝達する媒体は理性ではなく感性だ。もっとも,ソッコの選択は一体何をもたらしたのか。ファソンがポリグラフ検査を受けた後でソッコと擦れ違うとき,2人の距離がぐっと近付き離れていく。愛は善であるという命題の真偽は不明である。
(河田 充規)
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