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『17歳のエンディングノート』

 
       

17end-550.jpg『17歳のエンディングノート』

       
作品データ
原題 NOW IS GOOD
制作年・国 2012年 イギリス
上映時間 1時間43分
監督 オル・パーカー
出演 ダコタ・ファニング、ジェレミー・アーヴァイン、パディ・コンシダイン、オリヴィア・ウィリアムズ、カヤ・スコデラリオ 他
公開日、上映劇場 2013年4月27日(土)~新宿武蔵野館、梅田ガーデンシネマ、GW~神戸元町映画館 ほか全国順次公開

 

~限りある日々を濃密に生きた少女の足跡~

 

17end-3.jpg 白血病で、あと9カ月と余命宣告された17歳の少女テッサは、引きこもりの生活から一転、死ぬまでにぜひやっておきたいリストを作り、それを一つ一つ実行に移してゆく。「お酒を飲む」「パーティーで一晩中踊る」のほか、「ドラッグをやる」「セックスをする」など、オイオイ!と言いたくなることもある。ところが、リストにはなかった意外な事態が訪れる。恋…だ。

17end-1.jpg タイトルから、サラ・ポーリーが主演した『死ぬまでにしたい10のこと』を思い出したし、“涙で大量のティッシュが必要になるだろう”というコメントをちらっと見てしまってある程度の予想を余儀なくされたのだが、意外や意外、けっこう涙もろい私なのに、ほろっとしただけ。注目すべきは、愁嘆場をできるだけ避けていることだ。だから、どこかしら爽やかな、イイ感じの後味を残してくれたのではないだろうか。死とは忌み嫌うものではなく、死も含めて生の一部であると考えるようになった昨今、この映画は、死を前にした時の生き方でこそ人は輝くという希望を差し出す。

17end-2.jpg こういう場合、病気の本人よりも、周囲の人間のほうが、心配や恐れがエスカレートしていくのだろう。娘に対してあれこれ口を出し、過剰ともいえる愛を注ぐ父親は、仕事をやめてまで新しい治療法探しに躍起となる。一方で、別居中の母親は、ただただ為すすべもなく茫然自失状態だ。笑えるのは、「死んだら、ボクにとり憑くの?」などと尋ねる弟の素朴な言葉。そういう混乱状態の家族に対しては、時に思春期特有の苛立ちを返しつつ、テッサは隣に引っ越してきたアダムと恋人関係を深めていく、その恋が、すぐに断ち切れてしまうことを知りながら。このあたりのダコタ・ファニングの演技がいじらしく、とても切ない。

 人生が長かろうが短かろうが、思い切りやりたいことをやって、サバサバと「さいなら~!」とこっちからあっちの世界へ行けたらいいなあ。現実的にはなかなか難しくとも、そういう気にさせる作品だ。

(宮田彩未)

公式サイト⇒ http://www.17ending.com/
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