原題 | A ROYAL AFFAIR |
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制作年・国 | 2012年 デンマーク |
上映時間 | 2時間17分 |
監督 | ニコライ・アーセル |
出演 | マッツ・ミケルセン、アリシア・ヴィカンダー、ミケル・ボー・フォルスガード |
公開日、上映劇場 | 2013年4月27日(土)~Bunkamuraル・シネマ、テアトル梅田、5月4日(土)~シネ・リーブル神戸、5月下旬~京都シネマ 他全国順次公開 |
~アーサー王の騎士ランスロットが王妃グィネヴィアと恋に落ちたように,若い美女が現れると男は分別を失い,そして王国は混乱する~
人が生きられるのは長大な歴史と広大な世界の微小な一点に過ぎない。しかも,置かれた状況や立場に縛られて自由を失い,時には生命さえ奪われる。1766年から1772年にかけてデンマーク宮廷で,3人の男女が蛍のように輝いて儚く消え去った。カロリーヌが夫クリスチャン7世や愛人ヨハンとの日々を回顧する。そして,将来を皇太子と王女に託する手紙を残した。彼女は,国外追放されてもなお王妃としての自覚を最期まで失わなかった。
カロリーヌは,国王の病と苦悩が分からなかったと述懐する。国王は実際に精神を患っていたという。その無邪気ともいえる言動は病気によるものだった。だが,自分が施政では傀儡に過ぎないという無力感から狂気を装っていたと見えなくもない。枢密院の解散を宣言する姿には国王としての矜持が仄見える。彼が初めて侍医ヨハンと会ったとき,「この世は舞台,男と女は役者」等とシェークスピア劇の台詞を言い合って意気投合していた。
カロリーヌとヨハンを結び付けたのはルソーの「社会契約論」だ。「人間は生まれながら自由だが,鎖に繋がれている」という言葉が,本来の趣旨はともかく,2人の置かれた状況の隠喩のように響く。2人が平原を馬に乗って駆けるシーンは幻想のように美しい。だが,不義を犯した2人に破滅が忍び寄る。皇太后の存在が徐々に大きくなっていくのが怖い。「私は民衆の一人だ」というヨハンの叫びは痛切だ。急ぎすぎた改革が空をさ迷う。
カロリーヌとヨハンが仮面舞踏会で見つめ合うとき,スローモーションで心の内奥を映し出す。国王が両側に座った2人の手を握る情景は3人の関係を端的に示していた。カメラが要所を押さえて雄弁に物語ってくれる。密会を題材とする人形芝居の容赦のない恐ろしさ。王妃を乗せた馬車の行く海沿いの崖道が醸す不安。消沈したようなクリスチャンに皇太子と王女が近付くと,カーテンが開いて光が差し込む。予感に満ちた美しい幕切れだ。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://www.royal-affair.net/main.html
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