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『ベルヴィル・トーキョー』他2本《フレンチ・フィーメイル・ニューウェイブ》

 
       

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作品データ
原題 Belleville-Tokyo
制作年・国 2011年 フランス
上映時間 1時間15分
監督 エリーズ・ジラール
出演 ヴァレリー・ドンゼッリ,ジェレミー・エルカイム
公開日、上映劇場 2013年3月30日(土)~渋谷シアター・イメージフォーラムにて6週間限定上映、4月20日(土)~梅田ガーデンシネマ、5月18日(土)~京都みなみ会館 他順次公開


~三人三様の人生,楽しく切なくほろ苦く~

 

 フランス女性3人による監督作品の特集上映である。ジュリー・デルピーの3作目「スカイラブ」は,祖母の誕生日に集まった親戚一同による1日半程の騒動を描いたコメディだ。ミア・ハンセン=ラブの3作目「グッバイ・ファーストラブ」は,高校時代の恋の顛末を8年余にわたって見詰める。自他共に認めるシネフィルだというエリーズ・ジラールの処女作「ベルヴィル・トーキョー」は,違う風景を見ている夫婦の6か月の軌跡を描く。

 人工衛星“スカイラブ”の大気圏再突入は1979年7月だった。その直前にブルターニュのサン・マロで当時10歳だったアルベルティーヌの祖母の誕生パーティが開かれた。ジュリー・デルピー(1969年12月生)が母アンヌ役で登場するが,監督としては自らの少女時代の想い出をパワー溢れる映像で甦らせる。老若男女の言動を小気味よく重ね,時代の雰囲気を巧く出している。幼い彼女は,ディスコで弾けるも,淡い恋が破れてがっかりする。

 1999年2月のパリでは15歳のカミーユがシュリヴァンと付き合っていた。彼女は愛に生きるというが,彼は一人で南米への旅に出て「君を愛しているが別れてくれ」と告げる。監督自身が経験した初恋をモチーフにした作品だという。2003年には心機一転,建築を天職としロレンツと出会い,何とか孤独から抜け出すが,2007年7月に彼と再会する。彼女の揺れる心情が細やかに映し出されていく。彼女のテーマ曲のように“The Water”が流れる。

french-f-4.jpg 女は突然男から「距離を置こう」と言われる。映画評論家ジュリアンと名画座で働くマリーだ。妊娠中のマリーは傷心し苛立っている。2人の意識のズレが克明になっていく。例えば,胎児の画像を見る2人の表情が全く違う。マリーは東京へ出張したはずの夫がベルヴィルから自宅に電話を掛ける姿を目撃する。2人が出会いの曲“Ne Dis Rien”を歌う場面が切ない。昔の面影を愛し続ける男の姿が浮彫になる。そしてマリーが一人去っていく。

(河田 充規)

公式サイト⇒ http://mermaidfilms.co.jp/ffnw/
(C)Paolo Woods

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