(河田充規バージョン)
原題 | RUBY SPARKS |
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制作年・国 | 2012年 アメリカ |
上映時間 | 1時間44分 |
原作 | 脚本:ゾーイ・カザン |
監督 | ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス |
出演 | ポール・ダノ,ゾーイ・カザン,アントニオ・バンデラス,アネット・ベニング,スティーヴ・クーガン,エリオット・グールド,クリス・メッシーナ |
公開日、上映劇場 | 2012年12月15日(土)~シネクイント、2013年2月9日(土)~シネ・リーブル梅田、ほか全国順次ロードショー |
~愛は,現実と夢を超えて,奇跡を起こす~
カルヴィンは,10年前に10代で処女作がベストセラーとなり,天才と言われた。だが,過去に囚われ,自分の評価が落ちるのを恐れて2作目を書けず,悶々としていた。そんなとき,セラピストに指示され,夢に登場したルビー・スパークスの話を書き始めた。すると,彼女がカルヴィンの家に現れた。彼女は,彼の幻覚ではなく,他の人も話したり触れたりできる存在だった。しかも,彼がタイプライターで打った文章のとおりの動きをする。
理想の恋人を求める青年の夢を現実として描いた後,現実のように見えてもやはり幻想に過ぎなかったと思わせる。だが,それが本当に現実だったと思える出来事が起こり,幸せに包まれたエンディングを迎えることになる。現実と幻想が混交した,ちょっと不思議な感覚の映画だ。その卓越した構成力によって,コメディやファンタジーの要素を含みながら,割とシリアスに人間の欲望を直視するが,軽快なラブストーリーの装いは崩さない。
カルヴィンは,犬のスコッティと暮らし,話す相手は兄ハリーとセラピストだけで,友達がいない。ライラという元カノには捨てられた。後に鉢合わせしたとき,自分のことばかり考えて思いやりがなかったからだと言われる。彼がルビーにも心ない仕打ちをするシーンがある。小説を書かず彼女の心を操るのを止めると,彼女が彼と距離を置こうとしたからだった。文章を打って彼女に屈辱を与えるカルヴィンは,不気味で,醜さを露呈する。
人間の欲望は際限がない。カルヴィンは,ルビーには僕が必要だと書けばその通りに動くルビーに飽き足りなくなる。ルビーが自らの意思でカルヴィンを愛して欲しいと願う。それが叶わないと,彼女の創造主として君臨しようとした。だが,彼は,その愚かさに気付き,ルビーを過去から解き放つ。愛は,彼女を救い,そして彼自身をも変える奇跡の力を持っていた。やはりこれは,小説よりも奇なる現実を描いたロマンチックなラブコメだ。
(河田 充規)
公式サイト⇒ http://rubysparksjp.tumblr.com/
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