～小さな幸せを糧にしなやかに生きていく～

　３人は，かつてのバイト仲間のようだ。すーちゃん，まいちゃんは30代前半，さわ子さんは少し年上で，みんな独身だ。それぞれの日常が，さざ波は立っても，大きく荒れることなく，流れていく。ときどき会って互いに触れ合うことが，ちょっとしたアクセントになり，明日からまた頑張ってみようと思う。仕事，恋愛，結婚，介護など，将来に漠然とした不安を感じている。そんな中で，いくつかの選択や決断を重ねながら前に進んでいく。
 

　同年代の女性なら誰もが共感を抱くに違いない三人三様の愛すべき彼女たちを，柴咲コウ，真木よう子，寺島しのぶという魅力的な女優たちが共演している。３人とも，ちょっと立ち止まって周囲に目を向ければ，絶対すぐ近くにいるという実在感があり，好感度抜群のキャラで観る者を魅了する。また，木野花がすーちゃんの勤める店のオーナーとして貫禄を示す。３９歳でシングルマザーとなった人生の大先輩で，厳しくも温かい感じがいい。
 

　料理好きのすーちゃんは，カフェで店員として働いているが，憧れのマネージャーが他の店員と結婚するという。始める前に終わってしまった。だが，オーナーから店長をやってみないかと誘われる。まいちゃんは，営業職でバリバリと働いているが，ちょっと頑張りすぎだ。思い切って軌道修正しようと決める。彼女がすーちゃんの自転車の後ろに乗って堪えきれず泣き出し，すーちゃんも一緒に大声で泣く。そんな風に泣ける幸せが見える。
 

　さわ子さんは，母と同居して認知症の祖母を介護しながら，自宅で仕事をしている。自由に動き回る飼い猫がちょっぴり羨ましい。彼女の家に来たすーちゃんとまいちゃんが，さわ子さんの祖母に挨拶すると，祖母が「どうぞ，ごゆっくり」と答える。優しさが伝わって心が和むシーンだ。１年後には，迷いながらも人生の選択をし，新しい自分を生きる彼女たちがいた。しなやかに生きていくのは簡単ではないが，その姿は美しく輝いている。
　　　　　　　　　　　  　　　（河田 充規）

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