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『横道世之介』

 
       

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作品データ
制作年・国 2013年 日本
上映時間 2時間40分
原作 吉田修一著『横道世之介』毎日新聞社 文春文庫刊
監督 監督・脚本:沖田修一 脚本:前田司郎
出演 高良健吾、吉高由里子、池松壮亮、伊藤歩 、綾野剛、井浦新、余貴美子、きたろう
公開日、上映劇場 2013年2月23日(土)~新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、T・ジョイ京都、神戸国際松竹、109シネマズHAT神戸他全国ロードショー

 

~甘酸っぱい男目線の80’s青春群像劇~

yokomichi-2.jpg イマドキ大学生は早くから就職のことを考えて、勉強に資格取得に、そして就活にと奔走しなければならないようだが、80年代バブル期にさしかかろうとしている頃の大学生は全くもって気楽でのんきだった。苦しい大学受験を乗り越えた後は、サークル活動に華を咲かせたり、男子は競って免許をとり、どうやって女子を誘おうかと20才前後の青春を謳歌していた。そんな、楽しかった大学生活と、そこで出会った人たちを思い出すような40歳代のリアル青春ドラマを体現する横道世之介というキャラクター、そのバカバカしくも愛おしい姿に時を忘れて見入ってしまう。

yokomichi-3.jpg 『パレード』『悪人』の吉田修一による原作を、『キツツキと雨』の沖田修一が映画化。長崎から上京した大学一年の横道世之介を高良健吾がほぼ全編出ずっぱりで演じている。マイペースで、少しズレた感覚がありながらも、心の広い純粋なキャラクターを絶妙の間合いと仕草で表現し、世之介の大学友人倉持(池松壮亮)や、加藤(綾野剛)らとの掛け合いやズレぶりがツボにはまる。牧場でジャージ姿の世之介と倉持がサンバ練習をするシュールな姿や、風呂場で初体験話に盛り上がる姿など、男目線のちょっと恥ずかしいエピソードに心当たりのある男性諸氏も多いだろう。

 年上のパーティーガール(伊藤歩)に淡い恋心を抱いてみたり、「ごきげんよう~」の挨拶からはじまる超お嬢さま、祥子(吉高由里子)との関係にまんざらではなかったりと、奥手のようでそうでもない世之介の恋愛描写もズレ感満載だ。祥子が長崎の実家を訪れた時に海岸で密入国者と出会ったり、世之介の隣人(井浦新)に恐る恐る郵便物を届けたときに、知り合いとなってカメラを貸してもらったり、笑わされる恋のエピソードの中にさりげなくその後の彼らの人生を決定づける運命の瞬間を挿入している。

yokomichi-pos.jpg 現代(2003年)と過去を行き来しながら、大学時代の世之介を懐かしく思い出す友人たちの姿は、まさしく大学時代の彼らが心動かしたことと繋がっている。そして、辛いときも励まし、そばにいてくれ、どこか笑わせてくれる存在の世之介は、彼が亡くなった実感もないまま青春と共に笑顔でよみがえるのだ。世之介と出会った大学時代の東京(87年斉藤由貴のポスターや、懐かしいJRシルバーシートマークなど懐かしアイテムいっぱい!)を見事に再現しながら、彼を取り巻く友人たちと彼らのその後を描いた世之介を巡る青春群像劇になんともいえない親近感が湧いた。(江口由美)

公式サイト⇒http://yonosuke-movie.com/
©2013『横道世之介』製作委員会